●英国中間学派の代表的論客であるボラスの代表作である本書は,そのオリジナルな着想は本書の様々なところで表れている。タイトルは,フロイトの『悲哀とメランコリー』のたいへん有名な一節から採られている。それはボラスがその後一貫して関心を抱いているテーマを端的に示したものと言える。
●本書は,1987年に刊行されたChristopher Bollasの最初の著書,The Shadow of the Object : Psychoanalysis of the Unthought Known(Columbia University Press/New York)の全訳である。彼の著書の邦訳としては2冊目となる。
本書は,現在,英国中間学派(独立学派)の代表的論客として著名なBollasの様々な理論の核心を知る上で重要な著作であるが,そのオリジナルな着想は本書の様々なところで表れており,発売当初より大変世評が高かったことで知られている。本書の題名である「対象の影The Shadow of the Object」は,フロイトの著作『悲哀とメランコリー』のたいへん有名な一節から採られている。その一節は本書の冒頭に引用されているが,自我と自己の関係や,対象が喚起するものなどについて述べたものであり,Bollasがその後一貫して関心を抱いているテーマを端的に示したものと言えると思う。
●目次
謝辞/はじめに
第1部 対象の影
第1章 変形性対象
成人の生活における変形性対象の探求/臨床例/討論/結論
第2章 運命の手としての対象の精神
運命の手/人間の最初の審美的体験/文学に見られる例/場の精神/症例の提示
第3章 対象としての自己
内主観的空間と対象としての自己との関係/対象としての自己を管理すること/対象としての自己との関係のための設定としての夢/他
第4章 他者の劇場にて:夢見ること
症例/考察
第5章 トリセクシュアル
サンダー/性器から目に:性交から相互の凝視へ/トリセクシュアル的転換:欲望を覆う記憶/ナルシストとトリセクシュアル/さらなる考察
第2部 気分
第6章 気分と保存過程
生成的な気分と悪質な気分/記憶を助ける環境/臨床例 I /臨床例 II /臨床例 III /保存性対象/本当の自己と保存性対象/まとめ
第7章 愛しつつ憎むこと
否定的自己ー対象/回顧的なミラーリング/愛しつつ憎むことは,ある種の倒錯なのか
第8章 規範病
規範的パーソナリティ/未だ生まれぬもの/病因論的考察/規範的な破綻/自己をそらす/主体から客体へ/結論
第9章 抽出的取り入れ
いくつかの例/考察/喪失,無意識の悲嘆,そして暴力/必然としてのパラノイア
第3部 逆転移
第10章 虚言者
メタファーとしての嘘/現実の再構築/嘘の機能/転移/現実というショッキングな離脱/精神分析家の逆転移/他
第11章 精神分析家とヒステリー患者
感覚の語らい/母親/外在化の目的/分析家の転換ヒステリー
第12章 逆転移の表出的な使用:自分自身から患者へ渡す覚書
逆転移に向けた準備/自分自身の患者としての分析家/分析家の主観の使用/分析家の中での自己との関係性/他
第13章 自己分析と逆転移
自己分析的要素/受け取る能力/患者の自己分析に対する精神分析家の関与/転移の様々なポジション:対象の仕様/他
第14章 依存へのありふれた退行
供給としての逆転移:受容から喚起へ/依存への退行のありふれた道のり/退行はどこにあるのか,依存の一形態となるのか/他
第4部 エピローグ
第15章 未思考の知:早期の考察
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