平安仮名散文によって描かれる「風景」(情景)とは『源氏物語』で花開いた古代後期の豊かな知覚世界の現れであった。「描写」という概念の近代性から離脱することで『源氏物語』の特質を俯瞰する。
序 章 風景和文の主題
1 語られた風景ーー『源氏物語』の風景へ
2 風景の語り方ーー風景観の現れ
3 風景和文ーー用語と方法
4 さまざまな自然ーー研究史素描
第一章 風景和文の形成ーー『源氏物語』の空間の成立
1 風景和文という叙法
2 「語ること」「示すこと」「歌うこと」--叙法の三つ組み
3 「示すこと」と移りゆきーー発生的な連鎖
4 「歌うこと」と限りーーきわまりとしての空間
5 型への志向ーー様式としての成熟
6 物語空間の成立へ
第二章 風景和文の理想ーー『源氏物語』の春秋の幻景
1 風景和文の創意
2 六条院舟楽の空間ーー示すことと歌うこと
3 花咲く樹下の水景ーー移りゆきと一対の揃え
4 流水仙境に遊ぶーー競合と調和
5 住吉社頭の舞楽ーー重なりと見なし
6 幻想としての風景
第三章 風景和文の領域ーー『源氏物語』の演技する空間
1 空間と叙法ーー物語の時間
2 景物と恋情ーー和文脈と推移の感覚
3 風景と時間ーー予感の映像表現
4 景物の構成ーー意味への連絡
5 演技する空間ーー名の行為遂行性
第四章 風景和文の変容ーー『源氏物語』の景物の構成
1 表現としての風景ーー自然と気色
2 風景表現の特異性ーー出来事の生起
3 解釈される風景ーー主体としての夕霧
4 自立する風景ーー景物の連続
5 風景和文の独自性ーー見なしと構成
6 変容する風景ーー新しい自然
第五章 風景和文の意匠ーー『源氏物語』の橋と鳥の形象
1 風景を整えるーー場面と状況
2 宇治の風景ーー照応する現在
3 宇治橋の映像ーー可視化された時間
4 橋と鵲ーー共通と異質
5 鵲の名と図像ーー批評的言辞
6 風景和文の意匠性ーー状況の形象化
第六章 風景和文の遠近ーー『源氏物語』の接続する主体
1 風景和文と距離ーー世界との関係
2 遠景としての痛みと予兆ーー霞と水影
3 浮遊する情動と質感ーー露と涙
4 世界の揺らぎと複数性ーー見ることと聞くこと
5 風景と接続する主体ーー世界への気づき
終章 風景和文の思想
1 風景のリアルーー現在の提示
2 風景和文の三つの局面ーー風景の名
3 風景和文の方法ーー運用と洗練
4 風景を名指すーー『源氏物語』の風景
附章一 海辺の風景ーー『源氏物語』の須磨・明石から大堰へ
1 郷愁の景
2 須磨の海辺ーー雁と楫
3 須磨から明石へーー磯と浜
4 明石の眺望ーー島の名
5 大堰の水辺ーー篝火と漁火
6 幻景の自然
附章二 よい匂いのする情景ーー『源氏物語』の花の庭・樹木の香り
1 匂いの感覚
2 紫苑が香るーー朝霧の庭
3 花の匂いーー樺桜の咲く
4 風が運ぶーー梅・藤・橘
5 名香と樒ーー仏の香
6 匂いの情景
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