哲学者のギリシア悲劇論と言えば、アリストテレス、ニーチェのものが知られているが、本書は、ハイデッガーのギリシア悲劇論という、従来ほとんど取り上げられていない主題を論じる。主著『存在と時間』における背景から、講義録や覚書き、さらに近年注目の「黒表紙のノート」までをもとにこの主題に接近し、ハイデッガーの思索の道程を解明するとともに、ギリシア悲劇が有する哲学的、今日的意義を問う。
凡 例
序 問題の所在ーなぜギリシア悲劇なのか
第1章 歴史、運命、悲劇
1 原初と歴史への問い
2 『存在と時間』への遡源
3 「黒表紙のノート」における「悲劇」の所在
第2章 アイスキュロス解釈ー『縛られたプロメテウス』
1 アイスキュロスの悲劇作品
2 原初としてのプロメテウスー「黒表紙のノート」における
3 知(学問)と運命ー「ドイツの大学の自己主張」における
4 火と技術(テクネー)と真理ー『省慮』における
5 悲劇のさらなる問いへ
第3章 ソポクレス解釈(一)『オイディプス王』
1 ソポクレスへの積極的接近
2 言葉の本質
(一)「快き青さのなかに……」
(二)言葉の危険性
3 存在と仮象
(一)ピュシス、アレーテイア、ドクサ
(二)半神としてのオイディプス?
(三)仮象の悲劇
4 残される問題
第4章 ソポクレス解釈(二)『アンティゴネ』
1 『アンティゴネ』へ
2 人間本質への問いー『形而上学入門』
(一)存在と思索
(二)合唱歌の導入
(三)最も無気味なものとしての人間
3 アンティゴネの本質ーヘルダーリン「イスター」の解釈
(一)河流の本質
(二)作品への踏み込み
(三)存在としての竈
(四)生と死の対向性
第5章 ディオニュソスをめぐって
1 ハイデッガーにおける「神」
2 酒神ディオニュソス
3 半神ディオニュソスー神と人間との「間」
4 仮面の神ディオニュソス
5 祝祭と悲劇
第6章 ニーチェにおける「悲劇」
1 ニーチェとの対決のなかで
2 「力への意志」と悲劇
(一)芸術としての力への意志
(二)「アポロン的なもの」と「ディオニュソス的なもの」
(三)芸術と真理
3 「永劫回帰」と悲劇
(一)悲劇としての「永劫回帰」思想
(二)悲劇作品としての『ツァラトゥストラ』
(三)神と世界への問いかけ
(四)ニーチェに対する断定と揺れ
第7章 存在の問いと「悲劇」-歴史的運命としてのニヒリズム
1 ヘルダーリンとニーチェ
2 存在の悲劇性と存在の歴史
(一)没落と移行の受け止め直し
(二)歴史的運命としてのニヒリズム
結 問題の射程ー改めて、今なぜギリシア悲劇なのか
あとがき
注
文献表
索引(人名/事項)
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