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両親と弟が鬼籍に入り、かつて花街だったという古い町並みにある町屋の実家に戻ってきた貴樹。貴樹が書斎として定めた部屋はかつて弟が使っていた部屋だった。何気なく、書棚に立てかけられた鏡をずらしてみると、柱と壁に深い隙間があった。そしてその向こうに芸妓のような三味線を抱えて座るはかなげな着物姿の人影が見えた。その女と弟の死には関係があるかもしれないと探すうちに、貴樹がその女を見ずにはいられなくなりーー。(「芙蓉忌」より) 他、「関守」「まつとし聞かば」「魂やどりて」「水の声」「まさくに」の全6篇を収録。 解説は織守きょうや氏。 2019年、第10回 山田風太郎賞最終候補作。 芙蓉忌 関守 まつとし聞かば 魂やどりて 水の声 まさくに 解説 織守きょうや
レビュー(77件)
文庫で揃えたかったので、弐が出るのを待っていました。 前作よりも色んな視点・パターンの話が多かったと思います。 建物の図面がほしくなるのは相変わらず…(読解力とか空間把握力の問題という話が) 次作も楽しみです!
怖いだけではない様々な心情が残る作品の数々です。雨の日に読むのが合ってるような避けたいような。
「芙蓉忌」が圧倒的に面白かった。昔はこのような怪談があふれていたかもしれないけれど。最近はこの手の怪談はあまり見なくなったように思う。
本屋にあるのがクタッとしていて嫌だったのでネット購入 綺麗な本が届きました。 読むのが楽しみです
一巻目を文庫で購入したので、こちらも文庫化されるのを首を長くして待っておりました。 二巻に収録されている作品も、それぞれに風情と趣があり大満足です。各エピソード、淡々とした文体ながら、怖い、ページを繰るにつれてますます怖くなっていく。しかし途中で読みとめるのはもっと怖いので、「助けて、尾端さん!」と守護神のように待ち望むことになります。とはいえ、この尾端さんは戦うわけではありません。話を聞き、理や因を理解し、先方を慮って折り合いをつける、あるいは、それが無理なら流れを変える。力みのない自然体に、これまた安心感があったりするのです。 芙蓉忌:「魅入られる」というのはこのことですかね。 関守:彼女は本当にもといた自分の世界に戻ることができたのでしょうか。 まつとし聞かば:「家猫が行方不明になったときには『まつとし聞かば』と書いておけば戻ってくる」というおまじないですね。戻ってくるのはよいのですが・・・。 魂やどりて:「理(ことわり)」というものをまったく理解しない、尾端さんとは真逆の女性ですねぇ。 水の声:お願い事は、誤解を招かぬようはっきりと! まさくに:本当にいいヒトですわ(人ではないですが)。