我が国のエンゲル係数が、二十年を経てようやく三割台にまで回復し国民生活に微かに余裕が出始め化粧品業界も大きく発展する兆しか見えた昭和四十年。
化粧品容器を製造する下町工場に天宮明男が就職した。
入社式当日から遅刻した天宮に、不思議な『ニヤリ』で応じる経営者大林徹二。
現場研修で気付いた職場の問題点を改善しようと提案する天宮に現場の壁が立ちはだかる。
現場研修後、ただひとりの品質管理係となった天宮に与えられた業務は顧客品質事故品の原因調査であった。知恵も知識も乏しいと自覚している天宮の武器は情熱のみ。天宮の人生哲学は 目標達成=知恵×知識×情熱 情熱=(努力×時間)であった。
悪戦苦闘で数々の品質問題を解決しながら身につけた全工程知識を買われて設計担当となった天宮が、大型新製品の受注合戦の渦中に飛び込み受注に成功する。
『町工場を一流企業へ』の夢を持つ経営者大林徹二は数々の社内改革を行うがその過程で可愛い甥を退社させる。その情熱に共鳴した天宮は予定していた退社を諦め、大林と共に夢を追う覚悟を決める。
化粧品容器という目立たぬ日用雑貨品の業界でありながら、大きな夢に向かって邁進する経営者、従業者達の奮闘。本人達にとっては毎日が『小さな小さなプロジェクトX』であった。そこにはそれぞれの喜怒哀楽が有り、人生そのものが有った。
他の業界でも同様に無数の小さなプロジェクトXが躍動することにより敗戦日本が復興出来たのである。
卓越した能力をもたない平均的日本人の殆どが、目標達成=知恵×知識×情熱 情熱=(努力×時間)と考えて悪戦苦闘しながら与えられたテーマを克服した時代。
それを支えていたものは『努力を惜しまぬ勤労』と『勤労に報いる経営者』であった。
国家が不労所得を奨励し勤労を低価値化した結果立派な『嫌労国家』となった現在の日本。
そんな現代人から見れば滑稽に見えるかも知れない数々のエピソードから、『時代の変化がもたらす人間の変貌』、『人間の変化がもたらす社会の変貌』について、読者に問いかける。
レビュー(0件)