本書は、工学へのアプローチを念頭においた量子力学の入門書である。
量子力学の歴史的な流れにとらわれることなく、早い段階でシュレーディンガー方程式を導入し、その応用例に触れることで、量子力学的な世界観に慣れ親しめるように工夫した。また、量子力学の一般論(数学的枠組み)については、あえて付録にまわすことで、読者の学習スタイルに合わせて本書を使えるようにした。
さらに、大学における半期の講義を想定して、無闇に対象とする系を広げずに、思い切って「1次元系(いわゆる直線上の運動)」に絞ることにし、必要に応じて2次元系や3次元系への拡張を行うようにした。これによって、数学的な煩雑さを避けながらも、量子力学の基本的な考え方や本質を学べるように構成した。そのため、多くの教科書で中心的に書かれている「水素原子」は思い切って割愛し、一方で、エレクトロニクス分野において重要なテーマとなっている「電気伝導の量子論」の基礎を取り扱うことにした。
なお例題や章末問題には、工学系の学習者を意識して、具体的に数値を求める問題も含めるようにした。
本書を通して、量子力学における“多くの新しい疑問や不思議”と出会い、それらを理解・納得することで量子力学的思考を身に付けていただければ幸いである。
【主要目次】1.ようこそ! 量子の世界へ 2.量子とは何か? 3.シュレーディンガー方程式 4.量子力学における測定 5.束縛電子の量子論 6.散乱電子の量子論 7.周期ポテンシャル中の電子の量子論 8.多粒子系の量子論 9.電気伝導の量子論
まえがき
1.ようこそ! 量子の世界へ
1.1 量子力学リテラシーの時代
1.2 量子力学を納得するということ
2.量子とは何か?
2.1 電子は何者?
2.2 ド・ブロイ波長
2.3 光は何者?
3.シュレーディンガー方程式
3.1 量子力学の基礎方程式
3.2 波動関数
3.3 量子力学と古典力学の対応関係
4.量子力学における測定
4.1 物理量の期待値
4.2 エーレンフェストの定理
5.束縛電子の量子論
5.1 束縛状態と散乱状態
5.2 無限に深い井戸型ポテンシャル
5.3 1次元の調和振動子ポテンシャル
6.散乱電子の量子論
6.1 連続の方程式
6.2 ポテンシャル障壁による反射と透過
6.3 矩形型ポテンシャル障壁
6.4 一般的な形状をしたポテンシャル障壁
6.5 二重ポテンシャル障壁
7.周期ポテンシャル中の電子の量子論
7.1 ブロッホの定理とブロッホ関数
7.2 クローニッヒーペニー模型
7.3 ブロッホ関数の一般的性質
8.多粒子系の量子論
8.1 フェルミ粒子とボース粒子
8.2 相互作用しない多粒子系
8.3 自由電子フェルミ気体
9.電気伝導の量子論
9.1 金属の電気伝導
9.2 バンド理論による金属と絶縁体の分類
9.3 メソスコピック系の電気伝導
付録
A.量子力学の一般論
B.フェルミーディラック分布関数
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