●精神分析という知の対話的発展を語り下ろす待望の'ド巻ーーフロイ ト以後の発展と して,対象関係論を中心に,自我心理学,クライン,ビオン,フェアバーン,バリント,ラカ ン,そして現代の精神分析を論じる。理論的な入門であると同時に,臨床への示唆にも満ちた,生きた精神分析の講義録。
●精神分析がどういうものなのかを、4月からずっと講義を聞いている人はおそらく最初よりは少し違ったふうに感じるようになってきたのではないかと思います。というか、きてほしいと思うんですね。精神分析は今あんまり人気のある学問ではありません。しかし、臨床をやるときにその症状の背後にどんな意味があるんだろうとか、この人の人生のなかで、どういう主観的な世界のなかで、この症状やこの振る舞いが起こるのだろうかということを考えないでその人と会うということは、実は大変難しいことです。それはつい考えてしまうことなんです。私たちが人間としてそこにいると「この人はこんなことをやるんだけれど何でだろう」と考えてしまう。そういうものです。そういう問いというものを専門的に推し進めたものが精神分析です。(中略)自分の主観的な体験をつかって、しかも、単なる主観や思いこみでなく、できるだけ自分の主観的な考えにある種の客観性や公共性を持たせようと格闘して、そこにある理解を生み出すということなんですね。それは実は私たちが毎日ふつうにやっていることです。それを職業的、組織的に続けているということが精神分析であって、そのことが精神分析家の仕事です。そういうことをすることによって精神分析を受ける人のこころが変わってくる。変化してくる。一言でいえば、ゆとりを取り戻してくる。あるいは、その人らしくなったというふうに感じられる場合もあるんです。その人の生き方とか、生きる道筋とか、そういうものが微妙に、しかし、かなり本質的に変わっていく可能性のあるプラクティスなんですね。フロイトという人がそれに明確にかたちを与えて、言葉を与えて、ある一つの考え、文化というか、disciplineとして確立しよう、と考えたのが精神分析の出発点だと思います。(「第21章」より)
■目次
III フロイト以後
イントロダクション/対象関係論を中心に
11 フロイトとフロイト以後の精神分析
フロイトの死とナチスの台頭 ロンドン 北米 フランス 大論争の時代 南米 五〇〜六〇年代の北米 八○年代以降 精神分析とは何か
12 第一世代の分析家たち
ユングと日本の心理臨床 精神分析のオーソドックス フロイトから自由になる フェレンツィ、アブラハム、ジョーンズ フェレンツィの仕事と生涯
13 自我心理学の流れ
自我心理学とは アンナ・フロイト ハルトマン クリス エリクソン その後の自我心理学
14 クラインの人と仕事(1)
クラインの生涯 ロンドンでの受容から大論争時代へ クラインの仕事
15 クラインの人と仕事図(2)
16 ビオンとポストクライニアン
ビオン スィーガルとローゼンフェルドの仕事 その後のクライン派児童分析の発展 クライン派理論のまとめ
17 ウィニコットの人と仕事(1)
独立学派について ウィニコットの人と仕事
18 ウィニコットの人と仕事(2)
病理論 治療論 ウィニコットとクライン派の比較
19 フェアバーンとバリント
フェアバーン バリント
20 ラカンの人と仕事
ラカンという人物
21 現代の精神分析
治療対象の変化 諸学派の対立なき対話 欲動論の退潮と関係論の発展 逆転移の強調 精神医学との関係の変化 社会経済状況との葛藤
22 日本の精神分析
古澤平作 オリジナルな思考者、土居健郎 オーガナイザーとしての小此木啓吾 日本の精神分析の状況
リーディングガイド/あとがき/索引
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