美術「誕生」を経て、美術「変容」へ
明治末から大正にかけて、日本の近代美術は内面性と社会性に目覚めてゆきます。高村光太郎が芸術の絶対自由を叫び、荻原守衛は内的生命を高らかに歌い上げ、岸田劉生が内なる美を唱えます。
伝統派の絵画に、装飾性に満ちた清新な地平が切り開かれたのもこの時代でした。
そして、アヴァンギャルドたちは絵画や彫刻の枠から美術を解き放ち、民芸運動は美術と生活につながりを見出してゆきます。
関東大震災に見舞われたこの時代は、明治がつくりあげた美術が激しく揺さぶりをかけられた時代でもあったのです。
黒田清輝、青木繁から始まるこの巻では、明治が創り上げた美術が大いに変容していく時代に登場した作品を、「自己表現の自覚」と「社会性への目覚め」という新しい視点と数多くの作品で俯瞰します。
【編集担当からのおすすめ情報】
宣伝用のポスターやチラシ、絵葉書や包装紙、雑誌に本、そして舞台芸術にパフォーマンスまで。現代美術の“何でもアリ”の状況を遡源すると、この時代の美術にたどり着きます。一方、揺れ動く時代にあっても日本美術の伝統は脈々と受け継がれても行きます。ページをめくるごとに新鮮な驚きに出会えるこの巻に掲載されるカラー図版は、他の通常巻のほぼ2倍近い250点余。モノクロの挿図も約100点を収載。まさに美術の豊穣と混沌を堪能できる1冊です。
4 図版もくじ
6 はじめに 北澤憲昭
170 テクノロジーからアートへ -- 制度史的なスケッチ 北澤憲昭
174 「表現」の絵画 北澤憲昭
188 (コラム)日本近代美術史にみるユートピア思想 足立 元
190 (コラム)震災の記録画 ジェニファー・ワイゼンフェルド
192 図案と写真 森仁史
197 (コラム)書の近代 -- 「型」から造型へ 天野一夫
200 偶景『狂った一頁』 --日本映画と表現主義の邂逅 藤井素彦
202 都市空間のなかの造型 -- 建築・彫刻・工芸 藤井素彦
208 いけばなの近代化と未遂の前衛 三頭谷鷹史
210 前衛ーー越境する美術 滝沢恭司
222 図版解説
306 関連年表
317 序文英訳・英文作品リスト
レビュー(0件)