複式簿記は、十字軍の遠征が終わり、商業活動が活発になった11世紀の終わりから12世紀にかけてイタリアで発生し、15世紀にその体系を確立したといわれている。この段階での複式簿記は、ルカ・パチョーリによって1494年の『算術、幾何、比および比例総覧』において印刷された書物として体系的に示され、刊行されることになった。この書は数学書であり、ルカ・パチョーリはイタリアの大学で数学を講じた数学者であるが、この書において印刷本として初めて複式簿記が登場したのである。当時の学問に使用されている言語はラテン語であったが、本書はイタリア語で書かれており、学問言語としてのラテン語ではなく、民衆に理解されるイタリア語で、彼らの生活に役立つ内容を書こうとした「実学」の精神が見られる。これがヨーロッパ各地に伝搬され、簿記書の原型となった。現代の日本の簿記もルーツを探っていけばイタリアの簿記ということになる。
ルカ・パチョーリのこの書から510余年を経て、簿記を取り巻く環境も大きく変わり、会計に関連する法規も変わったのである。その中の一つが、貸借対照表等式である。資産=負債+資本に見るこの等式の資本が純資産に代わることになった。個人企業では、純資産を資本金で考えても何ら差し支えない。しかし、これまでの資本では、取り上げるその内容を十分に表示することができなくなり、これを純資産として発想を転換させることになったのである。したがって、資本会計が純資産会計となり、簿記でも株式会社の会計では、純資産会計を取り上げることになった。純資産の内容は1株主資本で、資本金、資本剰余金、利益剰余金そして自己株式からなっており、2評価・換算差額で、その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益、土地再評価差額金であり、3新株予約権となっている。このように、会社法により、財務諸表の構成要素を変更することになり、これにしたがって簿記システムと財務諸表の表示を関連付けて考えることが必要となった。また、平成19年度の税法改正により、「残存簿価1円」が登場することになり、有形固定資産の残存価額を0として減価償却を行うことになった。長い間、簿記教育の中で取り上げられてきた減価償却における残存価額や減価償却法としての定額法や定率法の考え方にも影響を及ぼすことになっている。
このように会計を取り巻く環境が大きく様変わりしていく中で複式簿記を学習しようとする人にとって役立つテキストである。
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