キュビスムとフォービスムを日本の土壌で独自に消化し、近代美術史に画期的な画業を残したとされる万鉄五郎。だが、晩年の8年間を過ごした神奈川県茅ケ崎で描きまくった南画は、一体なんだったのか…。この異貌の万に出会って以来、盛岡生マレ著者は、風土が画家の中に形成するものを追い求め、万の郷里・岩手県土沢の〈気圏〉を、同郷人の感覚で捉え、茅ケ崎へも何度か足を運ぶ。そして、〈桑園のある風景〉という共通項を探り当て、両地が“一本の赤い糸”で結ばれていた、と確信するに至る。本書は、美術家・村上善男がペンで描き出した、もうひとつの万鉄五郎像である。
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