童話とコラムと論文からなる特異なアンソロジー。三作に共通点があるとすれば、自然と人間が〈物自体〉同士として、見えない地下水脈によって繋がっている(通底している)という作者にとってはリアルな感覚だろうか。 一つ目の童話は、二家族が20年ほど前に羽鳥湖高原でキャンプした夏の日の思い出であって、その後半部分だけは、既に「魔法の森〜1999夏」というタイトルで2017年出版の『雲眇(うんびょう)集』に収められている。追加された前半部分は、女の子三人の様子が活き活きとしていて童話らしい仕上がりになっている。後半は三人娘の両親たちも登場して一人の女の子による創作劇のあらすじ披露で盛り上がっている。全編ほぼ実話のようだが、背景として想定されている森の女王デネブの魔法が「おとぎ話感」あるいは「オアシス感」を出している。 真ん中のサーキュラーエコノミーを題材にした短いコラムでは、「自然に優しい」とか「みんなでSDGsを実現しよう」とかの教唆よりも、むしろ、人と自然の通底を根拠とした志しの大切さを述べている。成し遂げてみたら、まるで魔法のようだったと思えるような無心の営みはどうしたら可能かを問うている。 最後の論文は、童話の持っていた「オアシス感」は、外から持ってくるものではなくて、私たちの内なる「隠された能力」としての気概と俯瞰を蘇らせることで可能ではないかと我々に呼び掛けている。交通革命MaaSを引き合いに出しているのは「旅のモード」で筆を運びたいからであって、個別にいちゃもんを付けているわけではなさそうである。そうした様々な社会改革の最中でこそ、気概や俯瞰の能力を眠らせてはいけないよとだけ言っている。
レビュー(0件)