●臨床精神病理学から統合失調症を読み解く
●本邦の精神病理学の第一人者による初の論文集。臨床医として統合失調症の治療に永年携わり、そのなかから生み出された著者の論考は、精神病理学に志向性をもつ臨床家はもちろん、一般の精神科医にとっても非常に有益である。哲学的な立場から人間精神やその現象に関心を寄せる読者にも格好の書。
●本書は,統合失調症についての精神病理学論考を集めた論文集である。臨床経験の傍らに産み落とされたものと考えていただいてもよいし,私個人の思索と格闘の跡と受けとめていただいてもよい。私が精神科医として臨床を始めた頃は,依然として精神病理学研究がこの分野で大きなウェイトを占めていた時代だった。ところが最近になって学会,専門誌のレベルで全国的,国際的な状況を振り返ってみると,確かに,精神病理学が,片隅に追いやられるどころか,場合によってはその存在さえ認められていないのではないかという危惧を持ってもおかしくない状況にあることに気づかざるをえなくなった。このことは私自身の臨床実感からすると非常に奇妙なことであるし,また臨床家の集まる研究会では,依然として精神病理学の意義を感じている方に多く出会う。それでも,どうも時代は,なぜ精神病理学が必要なのかから説き起こさなければならない時代になっているらしい。そのために今回書きおろしたのが序章である。それに続く各章は,すべて専門雑誌,専門書が初出である。堅苦しい形式で読者を立ち止まらせてしまうことを危惧して,それぞれの章に軽い序文をつけることとした。本書が分厚い精神病理学の伝統の中から一石を投じたものと自負している。(「まえがき」より)
●目次
まえがき
序章 主体性のパトスの精神病理学へ向けて
第一章 シュープのただなかの「受苦」と「能動」
第二章 「決定不能」に陥る患者
第三章 統合失調症患者と「社会」
第四章 人間学的、構造主義的にみた基底症状
第五章 壁を抜ける患者と治療者ーー病の経過と精神療法
第六章 統合失調症患者の自殺と自傷
第七章 哲学と精神医学
人名索引
事項索引
初出一覧
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