現代的な感覚で読みすごせない、古典文学に点描される人の行動や動作や、言葉に着目すると、そこには様々な思惑が込められているのが見えてくる。
本書が提供するのは、それらを念頭においた、古典文学を解読、感受することの肝要さ、つまり古典文学解読の視点、である。
本書所収の論考には「微視的なものに着眼し、仮説、考証を論理的に重ねながら、より大きな問題へと展開してゆく研究方法」が通底する。
稲田利徳の古典学の方法を知るエッセンスがふんだんに織り込まれた、贅沢な一冊。サブタイトルの日本人論とは、本書の全体を緩く結びつける透明な糸であり、内実は、古典文学を解読、感受する方法論の書ともいうべき本。
卓抜な推論と緻密な実証を絡め、古典文学に躍動する日本人の特性や文学作品の言葉・表現の背後に潜在する心情などを鮮明にする、魅力溢れる書です。
序言
第一章 人が動く景観
第一節 人が走るときーー王朝文学と中世文学の一面ーー
第二節 人が馬から下りるときーー『伊勢物語』の世界ーー
第三節 人が雨に濡れるときーー愛の証と風流心ーー
第二章 言葉の森
第一節 「しぶく」考ーー辞典類の用例の検討からーー
第二節 「かこ」考ーー今川了俊の語義ーー
第三節 「しほふむ」考ーー『梁塵秘抄』の新解釈ーー
第四節 「あこがみ」考ーー『梁塵秘抄』の新解釈ーー
第五節 「住吉の御前の岸の光」考ーー『梁塵秘抄』の新解釈ーー
第三章 家の継承
第一節 「落ちたる月の影」考
--清輔本『古今集』の享受ーー
第二節 三代の措辞ーー経信・俊頼・俊恵ーー
第三節 「三つなりの橘」考
結語
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