2世紀半にわたりローマの平和を謳歌した帝国にも4世紀には衰退の影が忍び寄っていた。ローマの下層社会に浸透していたキリスト教が、313年に公認されて権力中枢にまで広がり、教会の果たす社会的な役割が高まるなか、帝国衰亡の原因をキリスト教に帰そうとする批判が噴出する。内部では異端論争が多発し、カトリック教会は実践的にも神学的にも対応を迫られていた。アウグスティヌスは354年に北アフリカで生まれ、76年の生涯を激動の渦中に生きた。新プラトン主義を介してキリスト教信仰に入って以来、古典文化を受容しつつ異教や異端と対決しながら三位一体論などキリスト教神学の確立に貢献、さらには古典文化との総合を果たし、“最初の近代人”としてヨーロッパ思想に多大な影響を及ぼしてきた。司牧活動により社会的な要請に応え、観照をとおして熟成していったアウグスティヌス思想のダイナミズム。著者は初期から晩期にいたる膨大な著作を渉猟して時代の文脈のなかで読み解くことにより、その全体像を示す。
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