西アジアは古くから都市文明や都市国家の栄えた地域である。この地につくられた都市は、市壁を備え、その内側に宗教施設や市場、居住区、城塞や宮殿を築くという特徴をもつ。各都市は、周辺の農村や街道など複数のネットワークのなかに位置し、地域社会のかなめとして機能した。遠距離交易の拠点でもある都市には、イスラーム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒のほか、旅人や商人など多様な人々が暮らしていた。
東はアフガニスタンから西はエジプトまで、学術都市、商業都市、観光都市、軍営都市、要塞都市、港湾都市など、様々な顔をもつ7〜19世紀の西アジアの歴史都市に焦点をあてる。文献史料・絵図・地図の読み解きから都市社会を多角的に検証し、今に受け継がれるその歴史と文化を探る。
都市社会の多様性を描き出し、新たな歴史像を提示する。
まえがきー『都市からひもとく西アジア』に寄せて 守川知子
1 都市をつくるー建設・形成と発展
ムスリムがはじめて建設した都市バスラー軍営都市から経済と学術の都市へ 亀谷学
「二つの春の母」モスルの一二・一三世紀ーザンギー朝下の建設と破壊 柳谷あゆみ
スルタンとシャーの新たなギャンジャ 塩野崎信也
[コラム・港市1]港市マスカトとポルトガル人ー絵図に見る一六ー一七世紀の植民都市 大矢純
2 都市に生きるー人びとと都市社会
アレッポが「シーア派の街」であった頃 谷口淳一
ティムール朝期のヘラートにおける聖者たち 杉山雅樹
境界上の都市アインターブー「良き泉」の町 中町信孝
[コラム・港市2]船乗りたちが集う町アデン 栗山保之
3 都市を活かすー政治的・経済的機能
フランク人支配下の都市エルサレムー観光産業都市への発展 櫻井康人
山城から平城へー近世クルディスタンにおける都市機能の変容 山口昭彦
スンナ派学の牙城ブハラ 木村暁
[コラム・港市3]「民族の交差点」ハイファー近代東地中海の国際港湾都市 田中雅人
4 大都市を彩るー三都物語
イスファハーンは世界の半分? 守川知子
ナポレオン地図から読み解くカイローマイノリティに注目して 深見奈緒子
ノスタルジックな近代ー一九世紀イスタンブルの都市空間と都市行政 川本智史
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