文学に描かれる「橋」とは、渡るためのものではなく、人々の心を捉えるために存在するものである。小説の舞台として橋を巧みに利用することで、橋を渡る兵士たちの軍靴の足音が戦争の恐怖を伝え、橋が過去と現在をつなぐ役割を果たすことで、過ぎし日と、いまを見つめる登場人物の心の葛藤が深く投影される。
「橋」の世界が両岸を分けつなぐとき、文学はいきいきと動き出す。
はじめに
一、幣舞橋を見た人々
啄木のいた町──湯川秀樹 石川啄木 林芙美子 桑原武夫
第七師団の悲歌──徳冨蘆花 小宮山量平
海霧と霧笛──原田康子 更科源蔵
二、隅田川の幻景
にぎわいの痕跡──エドモン・ゴンクール 松尾芭蕉 小林一茶 関根弘
橋を舞台に──永井荷風 川端康成
「ブリュッケ」風の絵──藤牧義夫 松本竣介 洲之内徹 ランボー
時代ものを歩く──平岩弓枝 藤沢周平 池波正太郎
三、京都、大阪 「花街」の橋
風を探しに行く──井原西鶴 与謝蕪村 宇野浩二 富岡多恵子
名残の橋づくし──近松門左衛門 清少納言 三島由紀夫 岡本太郎
女が渡る道頓堀──織田作之助
京都灯ともしごろ──炭太祇 近藤浩一路 水上勉 村山槐多
四、石橋の静かな思想
リアルト橋を下駄はいて──岡本かの子 ヘンリー・ジェイムズ 須賀敦子 マルコ・ポーロ
蘇州舟遊の記──谷崎潤一郎 芥川龍之介
批評する人──竹内栖鳳 奥野信太郎 青木正児
失われゆく石橋──森敦 橘南谿 川路聖謨 イサベラ・バード
五、橋の上にある戦争
逃れ得ない場所──小泉八雲 アンブローズ・ビアス ヘミングウェイ
通りがかりの目撃──釈迢空 石田波郷 辻征夫
知識人たちの痛手──野間宏 堀田善衞 鮎川信夫
六、人生は橋を渡る
泣きに行く──三浦哲郎 フランツ・カフカ 富永太郎 中原中也
隠れ住む男たち──内田百間 松本清張 村松友視
向こう側のもの──グレアム・グリーン 池谷信三郎
旅ゆけば橋──歌川広重 田上菊舎 十返舎一九 川端龍子
あとがき
出典一覧
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