●「自分の考えの基本的なものが全部入っている」と言う本書は,A.T.ベックが認知療法について初めて体系的に書き表したものである。彼の認知療法の原点とも言え,現在も読み継がれている。認知療法・行動療法・認知行動療法家であれば,必携の名著である。原点から学ぶところは大きい。
■認知療法とは
認知療法の基本は,患者が持っている意識的な問題解決能力を利用するというところにあり,この点,精神分析の無意識的葛藤,行動療法の自動的反射,伝統的精神医学の神経科学的方法など,患者の手の届かない領域を想定 して行う他の治療法とは異なっている。認知の揺れが適応的な範囲内て起こっている分には問題はない。極端になったり,普通に行動できなくなった患者に治療を展開するにあたって,ベックは人間が持つ力を強調し,患者の認知の歪みを修正する。ここからこの精神療法は認知療法と呼ばれることになった。
●目次
序文
第1章 常識とその彼岸
患者のジレンマ/意識と常識/常識が失敗に終わるとき/常識を越えて:認知療法
第2章 内的コミュニケーションを求めて
隠されたメッセージ/自動思考の発見/自動思考の質/自己観察と自己指示/予期/規則および内的信号
第3章 意味と情緒
意味の意味/情緒への道/個人領域/悲しみ/幸福感と興奮/不安/怒り/悲しみ,怒り,および不安の喚起を区別する
第4章 情緒障害の認知内容
急性情緒障害/神経症的障害/精神病/思考の異常の質/規則の法則
第5章 抑うつのパラドックス
手がかり:喪失感覚/抑うつの発展/うつ病に関する実験的研究/うつ病の合成
第6章 警報は火事よりも悪い:不安神経症
不安/不安と恐怖/不安神経症
第7章 恐れて,しかし恐れず:恐怖症およ び強迫
“客観的危険”の問題/二重の確信系/恐怖症の発展
第8章 身体を越える心:精神身体障害およ びヒステリー
心と身体に関する問題/精神身体障害/身体的イメージ化/ヒステリー
第9章 認知療法の原則
認知療法の標的/治療的共同作業/信頼感を作り出す/問題の還元/学習することを学習すること
第10章 認知療法の技法
実証的方法/非適応的観念を認識すること/空白を埋める/距離をおくこと,および脱中心化/結論を確認すること/規則を変えること/全体的な戦略
第11章 うつ病に対する認知療法
認知的アプローチの理論的根拠/認知の修正の標的/外部からの要求を過大視すること/認知および行動療法の予後研究
第12章 認知療法の現状
精神療法を評価すること:いくつかの基準/治療の認知システム/精神分析との比較/行動療法:認知療法の構成要素/結語
参考文献/解題/人名索引/事項索引
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