19世紀、フランスのバルビゾン派の画家の中でも最も愛される画家ミレーの画業を傑作とともに紹介する入門書。近年の研究成果を踏まえ、ミレー神話の解体と再生を試みます。そこから見えてくるのは、二度と戻れない故郷への思い、痛烈な喪失感、鎮魂と復活への願い、そして何より描く喜びと自然との一体感──。優れた芸術作品は時代を映しだすとともに、時代を超えて見る者の魂を揺さぶることを教えてくれます。
ミレーは「農民画家」として知られますが、目に見えない神秘に対する関心も深く、ロマン主義を継承し印象派や象徴主義を先取りするような瑞々しい風景画も描いています。ミレーは、光が同時に闇を強調し、情景に神秘的な性格を与えることを熟知していました。村はずれに広がる満天の星空を愛でる感性、何気ない自然の美しさを見つめる繊細な眼差しは必見です。パステル画家としての才能も見過ごせません。いま一度、過去に定着したイメージにとらわれずに見直したい画家です。
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