これは、トゥハーミという名のアラブ系モロッコ人の物語である。彼は文盲のかわら職人で、自分の働く工場で窓のない物置部屋に住み、社会とは隔絶した生活を送っている。そして、アイシャ・カンディーシャという女の精霊と「結婚」しており、日常生活のさまざまな面をーとりわけ性愛生活をー完全に支配されていた。著者は、トゥハーミに対する度重なるインタビューを通して、その奇妙な心理世界に分け入り、それをなまなましく描き出す。そこには、オリエント的なエロティシズムや、イスラム世界の風変わりな精霊信仰がみなぎり、読む者を飽きさせない。トゥハーミの人生は読者に、一種の幻想的世界を垣間見せてくれるだろう。
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