二十世紀後半に作曲されたクラシック音楽の作品で、その後世界中のオーケストラや歌劇場のレパートリーに加わった作品はごく少ない。そして、現代の音楽であるはずの「現代音楽」は、一部の愛好家を除けば人気があるとは言いがたい。この状況を著者は、「現代のクラシック音楽というものが狭い範囲に限定されたからこそ、他のジャンルの音楽が大いに栄えているのに、オーケストラやオペラハウスがいわゆる『危機的状況』にある」と見る。現在もレパートリーの中心をなしているかつての大作曲家の系譜はどこへ行ってしまったのか?
映画『風と共に去りぬ』の作曲者でウィーン楽友協会音楽院に学んだマックス・スタイナーは、かつて「仮にワーグナーが今世紀に生きていたら、映画音楽でナンバーワンの作曲家になっていたでしょう」と語った。本書は二十世紀クラシック音楽の歴史を、この問題に大きな影響を与えた第一次・第二次世界大戦、冷戦とのかかわりから見ていくものである。「現代音楽」たる前衛音楽、政治的な事情で埋もれてしまった作曲家に、クラシック音楽家の系譜につらなる映画音楽やミュージカルの作曲家まで含めて語る。
イントロダクション
第1章 地上三万フィートからの眺め
第2章 ブラームスとワーグナーーーふたりの神々の黄昏
第3章 ストラヴィンスキーとシェーンベルクーー第一次世界大戦への序曲
第4章 カオスの誘惑
第5章 ヒトラー、ワーグナー、そして内側から回る毒
第6章 スターリンとムッソリーニの音楽
第7章 「出ヨーロッパ」が生んだ奇跡
第8章 新しい戦争、古い前衛
第9章 「現代音楽とは何か」を決めたのは冷戦だった
第10章 創作される歴史、消去される歴史
第11章 戦争と戦争がもたらした損失について
第12章 ひとつの世紀の終わり
付録 個人的な覚え書き
パウル・ヒンデミット/クルト・ヴァイル/エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト/アルノルト・シェーンベルク
謝辞
訳者あとがき
注と典拠
索引
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