「本書は、20世紀的な安定についての見通しのもとに近代化と進歩を語ろうとする夢を批判するものではない。……そうではなく、拠りどころを持たずに生きるという想像力に富んだ挑戦に取りくんでみたい。……もし、わたしたちがそうした菌としてのマツタケの魅力に心を開くならば、マツタケはわたしたちの好奇心をくすぐってくれるはずだ。その好奇心とは、不安定な時代を、ともに生き残ろうとするとき、最初に必要とされるものである」
オレゴン州(米国)、ラップランド(フィンランド)、雲南省(中国)におけるマルチサイテッドな調査にもとづき、日本に輸入されるマツタケのサプライチェーンの発達史をマツタケのみならず、マツ類や菌など人間以外の存在から多角的に叙述するマルチスピーシーズ民族誌。ホストツリーと共生関係を構築するマツタケは人工栽培ができず、その豊凶を自然にゆだねざるをえない不確定な存在である。そうしたマツタケを採取するのも、移民や難民など不安定な生活を余儀なくされてきた人びとである。生態資源の保護か利用かといった単純な二項対立を排し、種々の不確定性が絡まりあう現代社会の分析にふさわしい社会科学のあり方を展望する。
「進歩という概念にかわって目を向けるべきは、マツタケ狩りではなかろうか」。
絡まりあう
プロローグ 秋の香
第一部 残されたもの
1 気づく術
2 染めあう
3 スケールにまつわる諸問題
幕間 かおり
第二部 進歩にかわってーーサルベージ・アキュミュレーション
4 周縁を活かす
フリーダム……
5 オレゴン州オープンチケット村
6 戦争譚
7 国家におこったことーーふたとおりのアジア系アメリカ人
移ろいゆきながら……
8 ドルと円のはざま
9 贈り物・商品・贈り物
10 サルベージ・リズムーー攪乱下のビジネス
幕間 たどる
第三部 攪乱ーー意図しえぬ設計
11 森のいぶき
マツのなかからあらわれる……
12 歴史
13 蘇生
14 セレンディピティ
15 残骸
ギャップとパッチで……
16 科学と翻訳
17 飛びまわる胞子
幕間 ダンス
第四部 事態のまっただなかで
18 まつたけ十字軍ーーマツタケの応答を待ちながら
19 みんなのもの
20 結末に抗ってーー旅すがらに出会った人びと
胞子のゆくえーーマツタケのさらなる冒険
マツタケにきくーー訳者あとがき
本書で引用された文献の日本語版と日本語文献
索引
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