●私が興味をもつ領域はまさに精神医学と精神分析が重ね合わさるところである。そしてそれこそ私にとって精神医学の臨床に他ならないのである。--臨床と研究のあり方を生涯にわたり真摯に問いつづけた著者渾身の書。「甘え」はじめ「日常語の精神医学」を通奏低音として,臨床の諸問題を多角的に吟味する。
●目次
序
第1章 臨床と学問
第2章 「 甘え」理論と集団
第3章 日常語と専門語そして精神医学
日常語と専門語の比較/臺先生の照合障害論/安永さんのファントム空間論/木村教授の自己論/結語
第4章 コトバの問題
再びコトバについてーー臺弘先生へーー
第5章 漱石と精神分析
第6章 『 「自分」と「甘え」の精神病理』再論
1.日本語による発想 2.臨床的研究としての精神療法 3.同一化の視点 4.病像の時代的変遷 5.想起の問題
第7章 日本起源の概念は通用するか
1.森田療法について 2.「甘え」理論について 3.治療関係の客観性について 4.付言
第8章 リハビリテーションと精神医学
私の精神医学/キャッセルEric J.Cassellの臨床感/障害の受容の論は適切か/結語
第9章 精神分析と文化の関連をめぐって
1.文化を意識する 2.「甘え」理論の誕生 3.ナルシシズムの時代 4.対象関係とは何か 5.「甘え」と同一化 6.分析療法の将来
第10章 アイデンティフィケーションについて
第11章 精神医学と精神分析
第12章 臨床精神医学の方法論
精神医学の問題性/「甘え」概念の成立/病気とは何か/臨床所見のみで学問は可能か/精神科臨床のスペクトラム/精神的治療の2原則
付章 土居ワールドを味わう 話し手:土井健郎 聴き手:江口重幸
先生にとって「メンター」とは/精神科の臨床ーー『方法としての面接』/日本の精神科の教育ーーシステマティックか徒弟制度か/臨床家と倫理/「言葉をこころのアリバイにしてはならない」
■解説
この本は,ここ数年の間に書いた論文を集めたものである。学会あるいは学術集会で発表したものが多いが,それとは別に請われて別個に書いたものもある。それぞれの題は当然異なっているが,お読みくだされば分かるように,いずれも精神医学の臨床に関係する主題を扱っており,それぞれが精神分析的視点のもとに書かれている。因みに臨床精神医学と精神分析は別個に発達したものであり,今日でも両陣営に属する人たちは,御自分の臨床ないし研究をそれぞれ別個に続けておられる場合が多いだろう。しかし私の立場はこれと異なる。というのは,私は精神医学の臨床においてこそ精神分析のレーゾン・デートルが発揮されると思っているからだ。もちろん精神分析と無関係な精神医学の領域は広いし,また精神分析は精神分析で精神医学と別個にその価値を主張するであろう。しかし私が興味をもつ領域はまさに精神医学と精神分析が重ね合わさるところである。そしてそれこそ私にとって精神医学の臨床に他ならないのである。実際そうであればこそ私はこの本を「臨床精神医学の方法」と題した次第である。読者諸氏が著者の意のあるところを汲んで本書を読んでくだされば著者にとってこれに勝る喜びはないであろう。(「序」より)
レビュー(0件)