本書の初版・改訂版が目指したのは,相対論的場の量子論の基本構成を簡潔かつ明瞭に描き,そこでの主要な計算技法である共変摂動論の基礎を様々な具体例に基づいて分かり易く教授することであった.これにより,本書は,それまで自分ではペンを持って計算したことのない諸君も種々の物理量を求めるために必要な手法を無理なく修得できるテキストと評価され,二十数年の長きに亙って読み継がれてきた.
この間に,研究の最前線においては,欧州原子核研究機構(CERN)の巨大加速器 LHC が稼働を始め,トップクォークの詳細研究が進むと同時に長年その存在自体も含め謎に包まれていた粒子ヒッグスボソンも発見されて素粒子物理学の電弱標準理論を構成する基本要素が全て出揃う,という特筆すべき歴史的快挙もあった.
今回の改訂増補では,本書の基本方針を一層深めるという姿勢で現在の(そして読者の)視点から全体の記述が細部に亙って丁寧に再点検されると共に,上述の研究成果に対応すべく,トップクォークならびにヒッグスボソンの代表的崩壊過程の摂動計算とその背後にある電弱標準理論の基礎概念について解説するなど新たに幾つかの項目も加えられた.これにより,この第3版は,この分野を志す諸君にとって初版・改訂版以上に優れた道標の役割を果たす入門指導書となるものと大いに期待される.
はじめに
単位・記法
I. 古典力学から場の量子論へ
I.1 古典力学のラグランジュ形式: 解析力学
I.2 古典場のラグランジュ形式: 場の解析力学
I.3 古典力学の量子化: 量子力学
I.4 古典場の量子化: 波動場の量子論
I.5 多体系の量子力学と第2量子化: 粒子場の量子論
I.6 場の量子論の形式
I.7 量子系の時間発展の記述
1. シュレディンガー描像
2. ハイゼンベルク描像
3. 朝永ーディラック(相互作用)描像
4. 三つの描像の比較
II. 摂動計算の基礎と場の演算子
II.1 摂動論で計算する量
II.2 場の理論でのS行列
II.3 伝播関数と時間順序積
II.4 朝永ーディラック描像とS行列
II.5 散乱断面積と崩壊幅
II.6 場の演算子のまとめ
1. 実スカラー場
2. 複素スカラー場
3. ディラック場
4. 実ベクトル場(無質量)
5. 実ベクトル場(有質量)
6. 複素ベクトル場
III. ファインマン則と計算の具体例
III.1 共変摂動論での不変散乱振幅.
1. スカラー粒子散乱
2. 電子・陽電子対消滅
3. 電子・電子散乱
4. 電子・光子散乱
5. 反ディラック粒子を含む反応
6. ファインマン則
III.2 散乱断面積および崩壊幅の計算
1. 電子・陽電子対消滅
2. 電子・ニュートリノ散乱
3. 電子・光子散乱
4. ミューオン崩壊
5. トップ崩壊・ヒッグス崩壊
6. 偏極ビームによる電子・陽電子散乱
7. 偏極ディラック粒子対生成
付 録
付録1 ローレンツ変換と共変・反変ベクトル
付録2 ウィックの定理
付録3 γ 行列とディラックスピノル
付録4 対称性と場の演算子の変換性
付録5 P及びCP の保存・非保存
あとがき・参考図書
索引
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