ドヤ街の社会調査を続ける著者は、ある朝、横浜寿町の労働センター前で、奇妙な男に英語で話しかけられる。
彼の名は西川紀光(キミツ)。海と焼酎を愛する港湾労働者。彼は膨大な量の読書で世界の思想とつながり、独特の哲学を紡いでいた。
交流を深めるうち、著者はキミツの言葉を文字に残したいと強く思う。
聞き取りの時間が始まった。
あるときは喫茶店「亜歩郎(あぽろ)」で、あるときはドヤ(宿)で、あるときは山下公園でーーー
この本は天才キミツの人生と哲学の書であり、22年にわたる2人の友情の記録である。
*
第1版(2013年)の刊行から7年が経ち、大幅な増補を伴う完全版として刊行した。
聞き書き前のエピソードをいれ、「実存主義、20世紀最後のヒーロー」たる紀光の姿を活写する。
また、聞き書き後のことや家族からの証言も加わり、紀光の視線から日本社会を知る貴重な「一人民族誌」となっている。
紀光を紹介します
西川紀光という男/1995年の紀光/寿の哲学/港湾労働について/長男、そして人生への罰/トムとキミツ/再会
2007年、紀光の証言
テッポウで故郷へ/5歳が黄金時代/中学生のころ/自衛隊に入って/あほうだんす/港湾労働の良さ/天気が良くて/海の冒険譚/母の3回忌/アフォーダンスとオートポイエーシス/寿のこと/コリン・ウィルソンについて/刑務所のこと、女のこと/イギリスの高校生へ/ホッファーについて/寝ると夢を見る/因果応報について
社会人類学からみた紀光
聞き書きの後のこと
2007〜2011/寿町の変化/紀光の新生活/お姉さんの話/本ができた/紀光最期の日々
あとがき
レビュー(0件)