天才ロボット工学者・石黒浩とアンドロイドが、あなたの「常識」を覆す!
TVで人気のマツコ・デラックスさんそっくりのアンドロイド、マツコロイド。リアルさを追求するために毛穴を20万個持つマツコロイド──その生みの親が「世界を変える8人の天才」に選出されたこともある世界的ロボット工学者、石黒浩・大阪大学特別教授である。
美人すぎるアンドロイド・エリカ、不気味な外見なのになぜか人を虜にするテレノイド、人間国宝の故・桂米朝さんの名人芸を永久保存した米朝アンドロイド、自分そっくりのアンドロイド・通称イシグロイド……
世間の度肝を抜く斬新な発想で注目を集めてきた鬼才・石黒は、子どもの頃、「人の気持ち」がわからない子どもだったという。
大人になった今でもその正体がわからず、「人の気持ち」の謎を知りたいという思いから人工知能の研究、そしてアンドロイド開発・研究へと足を踏み入れた──。
アンドロイドが教えてくれる「人の気持ち」や「人間らしさ」の正体とは? 今まで常識と信じて疑わなかったことが次々と覆されていく様は鳥肌が立つほど面白く、またちょっと不気味でもある。
アンドロイドやロボットは、近い将来、必ずあなたの隣人となる。手塚治虫やSFが描いた未来はすぐそこまで来ている。最先端の場所に常に身を置く石黒浩の見ている未来をお見せしようではないか。
人間存在の本質に迫る興奮の知的アドベンチャー。これはもはや哲学だ!
レビュー(24件)
ロボットSFの体現者
著者は、ジェミノイド、マツコロイドなど、人間そっくりのロボットを作り続ける工学者の石黒浩さん。関西弁で親しみやすいトークを展開するが、よい意味で傲慢な先生である。 石黒さんは、子どもの頃から人の気持ちを理解することができず、長じて「わかっていないくせに子どもにえらそうなことを言っているのが、大人」(11ページ)と分かったという。美術を志すも、人工知能の研究に転じ、「『人の気持ちを考える』を理解するための人工知能を作るには、脳の神経団路を研究し真似しているだけではダメ」(13ページ)だという考えから、動く身体を持つロボットの研究に没頭したという。 テレノイドやジェミノイドなど、ある程度、複雑な動作をプログラミングしたロボットを開発し、周囲の人間の反応を見て、石黒さんは、「心とは、複雑に動くものに実体的にあるというより、その動きを見ている側が想像しているものなのだ」(55ページ)と確信したという。 美しすぎるロボット「ジェミノイドF」「エリカ」を開発した石黒さんは、当然、性的利用についても考察している。そして、「僕は人間がボランティア精神でセックスするよりも、アンドロイドを与えた方が、尊厳は保たれるような気がする」(90ページ)という。政治家や宗教的指導者、そして祖先をもアンドロイドで代替できると言い放つ。こういう傲慢さは好きである。 さらに、ロボットによる高齢者や自閉症者のケアを通じて、「ロボット相手のコミュニケーションで練習すれば、人間相手とは違って遠慮する必要もない」(100ページ)と言い切る。人間に比べて、遠慮なく「何度でも同じことをさせることができる」からだ。人間不信も、ここまで来ると天晴れである。 石黒さんは、人の心を超えて、人間の存在そのものをロボットに投映してゆく。 本書でも『攻殻機動隊』や『アイ・ロボット』に言及しているが、ロボット工学三原則で有名なアイザック・アシモフのSFロボット・シリーズに登場する、人間不信で陽電子ロボットを開発したスーザン・キャルビンは石黒さんに似ている。そして、最もロボット化された植民惑星ソラリアでは、ロボットが家族や社会の役割を担っている設定だ――。 石黒さんは、「考え続ける限り、人間は、他の動物とも、ロボットとも違う存在でいられるはずだ」(223ページ)と述べて締めくくる。アシモフSFの正統な後継者を、ここに見た思いがした。