島崎藤村の『破戒』以来、日本の近代文学と思惟とに巨大な影を投げかけて来たドストエフスキイ。社会主義革命、ニヒリズム、宗教復興など、19世紀以後の世界の思潮を貫く大きなテーマのほとんど全てに反応した作家であるためか、これまでドストエフスキイの文学は抽象的、観念的に受け取られることが多かった。本書ではこの作家の創作活動を、ロシアとヨーロッパの文学史、思想の流れの中に置き直して、作品の成立の事情を具体的に明らかにしようと努めた。さらに作品の内部世界に分け入ることにより、この作家の思想像を取り出し、現代の私たちにとっての意味を考えようとしている。
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