CWA受賞シリーズ完結
同じ納屋で相次ぎ見つかった二つの死体をめぐる
ペレス警部の推理、そして人生の決断ーー
極上の現代英国本格ミステリ
ペレス警部の自宅を訪れたのは、シェトランド本島に一家で移住してきたヘレナ。彼女はまえの持ち主が納屋で自殺して以降、何者かが家に侵入して謎めいた紙片を残していくことに悩まされていた。その納屋で、今度は近所の家の子守りが死体で見つかり、ペレスが捜査担当者となるのだが──CWA最優秀長編賞受賞作『大鴉の啼く冬』に始まった現代本格ミステリ・シリーズ最終巻。解説=古山裕樹
レビュー(12件)
待望のシリーズ最終巻です。 シェトランド四重奏(カルテット)と称される前半の四巻と比較して、後半は社会問題や環境問題にからむ事件が多く、かなり近代的な印象でした。その中で、この最終巻は、一巻目に回帰した印象があります。 原題は「Wild fire (野火)」。日本では「噂が野火のように広がる」というフレーズがありますが、どうやら英語でも同様のようです。小さな悪意や噂の火種が、囁かれるうちに野火のように広がり、やがてすべての覆いつくす。そして、その様子を眺めて悦に入る。 悪意や暴力や虐待の連鎖を断ち切るにはどうしたらよいのでしょうね。 また、本作では「優しさをだだもれにさせている」的表現をされがちなペレスが、特に前半でいら立ちをあらわにして新鮮でした。感じ悪いペレス警部は、周囲の人を戸惑わせるばかりなのでした。 おそらく自分の未来を勝手に決められて、主導権を奪われたような気がして反射的に拒絶反応がでたのでしょう。自分の人生の舵は自分でとりたいものです。 最後にはうまく未来を描くことができるようになった、あるいは、描けない混沌を受け入れることができるようになってよかったです。 大変満足のいくシリーズでした。 また長らく品切れとなっていた四巻が再版されたようで、こちらもよかったです。