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この『風が吹くとき』は、もともとイギリスで1982年に出版された作品で、日本語訳は以前別の出版社で出ていましたが、今回翻訳をし直してあらたに出版することになりました。出版当時から、漫画のコマ割りの手法を使ってシリアスな問題を描いた、絵本の常識をくつがえす作品として、大きな評判を呼んだ作品です。それから15年以上たった今、ソ連は崩壊し、米ソ2大国が国際政治を大きく左右していた時代は去って、世界の情勢はもっと複雑になってきているように思えます。しかし、最近のインドやパキスタンの核実験で明らかになったように、核兵器をパワーゲームの切り札とみなす風潮はまだまだ盛んです。そういう意味では、核戦争の脅威は去ったわけではありません。まだ、核は使用しなくても、ジムやヒルダのようなふつうの人たちが犠牲になる戦争は、世界各地で多発しています。レイモンド・ブリッグズがこの絵本で描こうとした状況は、表向きの形は変わっても、今でも存在しているのです。この絵本が、親子いっしょに、もう一度核の問題、そして戦争の問題を考えるきっかけになってくれれば幸いです。
レビュー(72件)
友人の子供への贈り物
子供へ語りながら、親が受け止めてほしいですね。 もう、圧倒的に、平和ボケしているから。
昔これを始めて読んだときに「バカではいけない、勉強して知識をつけなければ」と思ったのを思い出しました。そのころはまだネットも普及していなかったので図書館に通い新聞や本を読み漁ったものでした。今は役に立たない嘘吐きだらけのTVや新聞は見ていませんが、ネットでの情報収集はかかせません。 そして現在、日本の政府やメディアの姿はますます悪化・劣化し国民が正しい情報を得るのがますます難しくなっている。そのせいで国民総被曝させられようとしている。でも私たちは負けてはいけない。そんなことをあらためて認識することができてよかったです。 でもうちの子供にはまだよくわからなかったようです。まずははだしのゲンからかな。でもはだしのゲンは小学校からこっそり撤去されていってるようですね。子供の学校にはまだありますが。
福島の原発事故で
記憶の片隅にあったこの本の事を、今回の原発事故で思い出し、読みたくなり購入しました。老夫婦の無知さ故の行動、放射能、核戦争の恐ろしさがジワジワと伝わってきました。高学年の子供も真剣に読んでいました。
盲信⇒現実
根拠のない情報、それを盲信する老夫婦。 核戦争、放射線の恐ろしさが静かに、確実に 人々を襲い、蝕んでいく。 大人、子供を問わず、観てほしい作品です。
中学生の時に読んで以来です。 今回の震災、原発事故で思い浮かんだのが、この絵本の、自分たちの身に起きている事の意味や、真実が何もわからないまま平和な日常から突然切り離され、亡くなっていく夫婦の姿でした。 自分がネットで集める海外の情報と、政府が公表する情報の違いに日々混乱して、絶望的な気持ちになる時もありますが、自分のおかれている状況の意味を 理解したいと思う。この夫婦のようにはなりたくない。 初めて読んだ時の衝撃はなかったが、まさかこんな状況の中で再読する事になるとは思わなかった。私も安全神話の中で生きてきたのだと痛感している。 4/5注文、4/11到着でした。