NHKで40年にわたって放送された《中学生日記》(1972〜2012年)は、「普通」と「日常」を強調するドラマ形式を借りながら、学校外の中学生と大人への啓発を強く意図した日本独自の社会教育番組であった。これほど長きにわたって「中学生のリアル」を中継したテレビドラマは、いかなる条件で成立し、視聴者の自主性をいかにして引き出し、どのような社会的役割を果たしたのか。生徒、保護者、教師、それぞれの立場を描いて中学校の安定的な社会化に重要な役割を果たした番組を歴史的に位置づける、気鋭の若手研究者によるメディア史研究の意欲作。
序章 「中学生の日常」の演出
1 社会教育番組における真正性ーー問題の所在
2 演出された真正性ーー分析視点・立場
3 先行研究と本書の特色
4 アーカイブとオーラル・ヒストリーーー史料の発掘
5 本書の構成
第1部 《中学生日記》が示した「リアル」
第1章 「受験戦争」という問題提起ーー1962〜1983年度
1 保護者向けの教育・教養番組としての前身
2 《中学生日記》の時期区分
3 教育問題を提起する番組というスタート
4 自主性と平等主義への重要視
第2章 悩みへの多様な解決策ーー1984〜2002年度
1 「マス」から「パーソナル」の時代へ
2 解決案を提示する番組への変容
3 「個性重視の原則」をめぐるせめぎ合い
第3章 ネットに隠れた「中学生の日常」の可視化ーー2003〜2011年度
1 水平的多様化という理想の二一世紀
2 若い世代に向けたリニューアル
3 「青少年向けの番組」という虚構
第2部 社会教育番組が果たした役割
第4章 「名古屋」という条件ーー中学生日記班と地域社会
1 地域社会の参加に着目する理由
2 自主性を重んじる制作環境
3 名古屋市民と中学生日記班
第5章 「家庭」「学校」以外の舞台ーー放送児童劇団と社会教育
1 なぜ、放送児童劇団に注目するのか
2 NHK名古屋児童劇団の成立と変容
3 放送児童劇団における社会教育の構造
第6章 テレビに映った「裏領域」の役割ーー《中学生日記》のメディア論
1 テレビと活字メディア、ネットとの比較メディア論
2 制作現場における「大人」と「中学生」
3 《中学生日記》への青少年の受容
4 境界線の再構築ーー2003年以降の挑戦
終章 ポスト《中学生日記》の時代へ
1 《中学生日記》の全体像
2 「大人」なき時代における「中学生」イメージのゆくえーー課題と展望1
3 「普通の人たちの日常」のテレビ論ーー課題と展望2
あとがき/初出一覧/参考文献一覧/関連年表/《中学生日記》情報リスト
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