本書は、女流詩人の書いた伝説集である。その構成は、伝説編・詩編・采女考などの三部で、表題が示す通り伝説の根本に立ちかえろうという意図のもとに、今までに書きためた中から選んで編述している。伝説は口承文芸の一種で、単純なモチーフから成立し、何らの技巧も加えず、これを歴史的真実として語ったものである。伝説の中の事件を特定の場所と物に結びつけて、現実の中で人を信じさせようとしている。そのために、ことことしい説明や史的記録を漁り、これを駆使して丹念に考証しているようすがよくわかる。しかも幾度ともなく足を運び調査研究に没入しているようすは、何物にもかえ難い。詩編は伝説を題材に独自のロマンを展開させている。采女考は、文献に記録された史的伝説が口承化されていく過程をみるようで大へん興味深い。
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