本書(ノーベル賞からみた有機化学入門)の動機は,有機化学の誕生およびその発展を記すにあたり,ノーベル賞受賞者の業績に注目することにある.ノーベル賞を受賞した人々が,研究を始めるときに何を見,何を感じ,どんな目的でどういう実験をし,得られた結果から何を洞察したか,それが有機化学の発展にいかに貢献したかを考察することで,自ずと躍動する有機化学の発展を叙述することができるからである.したがって本書の目的は,躍動する有機化学をその特性に従って叙述することにあるということもできる.言わば,ノーベル賞受賞者一人一人の研究人生を綴った教科書である.研究成果を体系的に学んだところで,理解力は向上しても研究能力は身につかない.研究成果にたどりついた試行錯誤の轍を学ぶことにより,初めて研究能力が向上するからである.今は,やさしい教科書が歓迎される世の中であるが,学力,特に研究能力をつけるためには,この教科書と格闘して欲しい.きっと,諸君の人生が変わるはずである.有機化学は日本人の得意分野である.読者の中から,福井謙一,白川英樹,野依良治,田中 耕一,下村脩,根岸英一,鈴木章 の各先生の後に続くノーベル賞授賞者の出現を期待する.なお、本書出版に当たり、2010年度ノーベル化学賞受賞者の根岸英一教授より、「すばらしいManuscriptをお送り下さり,まことにありがとうございました.非常にinspiringなTopicについて,Humorたっぷりに,かつ極めて正確に書かれていることに深い感銘受けました.是非,多くの希望に満ちた若い方々に読んでいただきたいと思います.私も是非複数冊手元におきたいものと今から望んでおります.あいにく超多忙な状態が続き,上記の”小文”で失礼しますが,出版のご成功を祈ります.早々.」と励ましのお言葉を頂いています.
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