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「問題は、侵攻のあるなしではない。それがいつになるかだ」 中国の台湾侵攻について、各国の軍事・外交専門家はそう話す。 中国の指導者・習近平はなにをきっかけに侵攻を決断するのか。 その際、まず、どのような準備に着手するのか。 アメリカ・台湾はその徴候を察知できるのかーー。 元陸上自衛隊最高幹部が、台湾侵攻を完全にシミュレーションした! 陸上自衛隊の第三師団長、陸上幕僚副長、方面総監を務めた元陸将・山下裕貴氏は、沖縄勤務時代には与那国島への部隊配置も担当した。中国人民解放軍、米インド太平洋軍、そしてもちろん自衛隊の戦力を知り尽くす。戦地となる台湾周辺の地形も分析し、政府首脳も参加する机上演習(ウォーゲーム)のコーディネーターも務める、日本最高の専門家で、本書はいわば、「紙上ウォーゲーム」である。 中国と台湾を隔てる台湾海峡は、もっとも短いところで140キロもある。潮の流れが速く、冬場には強風が吹き、濃い霧が発生して、夏場には多くの台風が通過する、自然の要害である。 ロシアによるウクライナ侵略では、地続きの隣国にもかかわらず、弾薬や食料などの輸送(兵站)でロシア軍は非常な困難に直面し、苦戦のもっとも大きな原因となった。 中国は台湾に向け、数十万の大軍を波高い海峡を越えて送り込むことになる。上陸に成功しても、その後の武器・弾薬・燃料・食料・医薬品の輸送は困難をきわめる。 「台湾関係法」に基づき、「有事の場合は介入する」と明言しているアメリカも、中国の障害となる。アメリカ軍が動けば、集団的自衛権が発動され、同盟国の日本・自衛隊も支援に回る。 つまり、自衛隊ははじめて本格的な戦闘を経験することになる。 日米が参戦すれば、中国は台湾、アメリカ、日本の3ヵ国を敵に回し、交戦することを強いられる。 それでも、習近平総書記率いる中国は、「必勝」の戦略を練り上げ、侵攻に踏み切るだろう。 そうなったとき台湾はどこまで抵抗できるのか。 アメリカの来援は間に合うのか。 台湾からわずか110キロの位置にある与那国島は、台湾有事になれば必ず巻き込まれる。与那国島が、戦場になる可能性は高いーー。 手に汗握る攻防、迫真の台湾上陸戦分析!
レビュー(13件)
「小隊」「邦人奪還」のような小説家が書いたものとは違うので専門家向きかも。
戦争を起こさない努力が必要です。
ロシアによるクライナへの侵略が始まってから,番組のコメンテーターとして見かけるようになり,その解説ぶりから「イケイケ,ドンドン」のタイプのお方だとばかり思っておりましたが,本書を読んでその印象が変わりました。緻密なデータに基づく様々想定される場面を丁寧に表現されており,決して「イケイケ,ドンドン」というお方によるの勢いでの作品ではありませんでした。 1冊の本として読んでみての感想は,同じようなテーマを扱った作品でも作者によって文章の組み立て(構成)は作者によって違いますが,本書の構成はとても読みやすく,しかも理解しやすい内容で一気に読むことができました。ネタバレになりますが,作者の一人の人間としての生い立ちに関する記述もあり,その人柄も好きになりました。 本書のタイトルが真実味が帯びてきた現在の世界情勢ですが,戦争は起きてしまえば悲惨な事実しか残りません。そのためには「如何にして戦争を起こさないか」ということを最優先に考えていくことが,人類に課された宿題だと思わされました。
元陸上自衛隊幹部が著した、中国による台湾への軍事侵攻のシミュレーション結果が述べられている。シミュレーションの前提により結果は色々変わってくりであろうが、中国軍の揚陸能力と兵站能力の不足、台湾信仰をした際のインド軍の動き、に言及されており興味深かった。
山下陸将の二冊目の本です。前回のオペレーション雷撃も小説ですが、大変リアルで面白かったです。本作は、前作にも増して、本当の台湾有事の際の世界と日本の動きが専門家視点で描かれており、大変勉強になりました。このような事態が起こらないようにするためにも、国民一人一人が意識を高めて、地域の戦力均衡による抑止力強化に取り組み続ける必要があると思います。
一読をお薦めします。
精密な資料の分析に基づきシュミレーションを行っており、今の日本にもその兆候が現れているのではないかと思いました。尚、資料編もあり、非常に参考になりました。