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18歳の時に書いた作品で芥川賞候補となり、21歳で自殺した幻の作家・久坂葉子。神話化した天才作家の心の翳りを映す精選作品集。 今も惜しまれる元祖天才文学少女、その青春の光と影ーー。18歳の時書いた作品で芥川賞候補となり、そのわずか3年後に、列車に身を投げた久坂葉子。名門の出という重圧に抗いつつ、敗戦後の倦怠と自由の空気の中で、生きることの辛さを全身で表すかのように、華やかな言動の陰で繰り返される自殺劇……。遺書的作品「幾度目かの最期」を中心に、神話化された幻の作家の心の翳りを映す貴重な1冊。 久坂部羊 自殺の当日に完成されたのが、本書収録の『幾度目かの最期』である。この作品を読んだときの衝撃は、今も忘れられない。自分の死と文学をこれほど一致させた作品がほかにあるだろうか。自らの死を1編の小説に結晶させ、その作品の予告通りに死ぬ。それは芥川にも太宰にも三島にもなし得なかったことである。--<「解説」より>
レビュー(18件)
久坂葉子
富士正晴の『贋作・久坂葉子伝』を数年前に読んだが、久坂自身の作品は未読だった。今回表題作その他を読むと非常に既視感を感じる一方で、生硬ながらも迫力ある文体は「女太宰」との異名を取っただけはある。なかなか出版されていない作家なので読む機会が少ないが、入手できれば読むようにしたい。
文庫本でそれほど厚みもなく、1200円は高価に感じますが、読み応えは十分にあります。天才少女久坂葉子が贈る私小説。戦時中の激動の日本とその中で揺れ動く乙女心がよく書かれています。