ソクラテスの対話による探求は必ずアポリア(行き詰まり、困難)に陥る。それは対話を通して互いが分かり合ってしまえるような関係ではない。それではアポリアに逢着するソクラテスにおける対話の真の意義とは何であろうか?著者は「ラケス」「プロタゴラス」「リュシス」「ゴルギアス」「国家」「メノン」篇という六つの対話篇を詳細に分析することにより、その謎に迫る。ソクラテスの対話が「神からの贈り物」と呼ばれるのはソクラテスを受け止めることにより私たちが己れの知の思いなしとその傲慢さから解放されるからである。ソクラテスの対話は言説の吟味であると同時に対話を行う人自身の吟味でもある。ソクラテスにとってアポリアがたんなる失敗や挫折ではなく、哲学の探求とは「アポリアからの出発」であることが明らかにされる。
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