筆者は、国際協力機構(JICA)の恩恵により、通算10年以上にわたって、ラテンアメリカを中心に国際農業協力に従事してきた。主な任国を列挙すると、パナマ、コロンビア、エクアドル、ブラジルおよびパラグアイであり、任国外旅行や国際学会のシンポジウムの参加・発表も含めると、メキシコ、グァテマラ、ホンジュラス、コスタリカおよびペルーを訪問したことがあり、これらの国々の古代文明や農業事情を視察できる機会にも恵まれ、任国における適正技術の模索とそれに準じた形の技術協力(野外での基礎研究や学生卒業論文指導教育)に携わることができた(ブラジルのみ、全国拓植農業協同組合JATAKの嘱託研究員という形である)。 これらの成果(各論となるべき事項)は別冊にまわすとして、本書では、筆者の上記訪問国の農業事情を地理ならびに歴史的背景について取りまとめ、その一部において、化学、生物および地質的な部分、さらに、NHKのドキュメンタリー番組等で得られた情報も盛り込んだ形で、ラテンアメリカの農業事情をまとめたものである。私たちにとって、「遠方であるラテンアメリカの農業事情を学ぶことにどのような意義があるのか?」と思われる方が居られるものと想像する。実は、わが国の農業や穀物輸入(穀物自給率が約29%)と大きく関係しており、米国をはじめ、ブラジルをはじめとするラテンアメリカからも大量の穀物を輸入している。ところが、わが国と異なり、土壌資源の劣化が問題視されていることや、中国やインド等の国々も、ブラジルの広大な酸性土壌地帯(主に中西部のセラードや北部のアマゾナス地帯)で生産される大量の穀物の買い付けを行っていることも考慮して、これからも、安定的に食糧輸入ができるのか疑問視する考えもある。 そこで、国内の農業(主に耕作放棄地の有効利用と穀物自給率の更なる向上)を見直す意味においても、食糧供給超大国であるブラジルや、他のラテンアメリカ諸国(筆者の訪問国に限る)の農業・環境を学ぶことも必要と考え、本書を作成した次第である。 多くの方々に関心を持っていただき、これからの日本農業の発展(新規ビジネスチャンスも考えたい)にとって、一つの参考的知見となっていただければ幸いである。
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