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冷たく凪いでいたぼくの心にゆれる小さくてもたしかな炎 小1のとき、母を亡くして以来、どうしようもないことがあるとあきらめてきた螢一。小6の2学期も終わるころ、螢一を突然おそったある子の記憶。しだいに明らかになる記憶の持ち主、花が瑛を傷つけた出来事。親友の翔真と現実の花をさがすうちに、螢一も翔真を傷つけていたことに気づく。「あきらめない」ことを選んだ螢一の冷たく凪いでいた心に、小さくてもたしかな火がともり……。 螢一と翔真、花と瑛が織りなす、熱く切ない絆の物語。 0 暗闇にすむ怪物たち p005 1 女装男子は歌をうたう p009 2 ぼくのじゃない記憶 p072 3 置き去りにされた想い p145 4 運命の赤いイヤホン p226 5 ラブソングのひびく夜に p268
レビュー(11件)
心に沁みました
蛍一と翔真、親友どおし2人のキャラと心の動きに、蛍一が備品室で出会った不思議な事象をからめて、丁寧な筆で描かれています。のんびりしてユニークだけれど、相手を傷つけないように配慮する蛍一は、5年前に母を亡くし、「この世にはどうしようもないことがある」というあきらめを知っている。翔真は一見、勝ち気でぶっとんでいるけれど、自分らしくあるためにいつも闘っている。翔真は、これからも一緒に闘ってほしかった蛍一に、「大人になることはあきらめる事」と言われ、「蛍一」を諦め、一人で進んでいこうとする。でも最後に蛍一は、翔真の本当の気持ちを知り、備品室での出来事を通して「あきらめない」事の大切さに気がつく。こう書くと、難しい重いストーリーと思われるかもしれませんが、やわらかい書き方でスムーズに読め、素直に心に沁みました。同じ作家の「あの子の秘密」も好きですが、あちらの主人公の言動は、私にはちょっとわざとらしさも感じられました。こちらはやわらかい筆致で肩の力を抜いて楽しめ、感動しました。私が今まで読んだ児童文学の中で、これはいちばん好きな作品です。
ずっと欲しかったけど書店にはもう売っていなかったのであってよかったです!