本書は、石川啄木の評論と詩歌に関する考察を収めている。特に、評論「時代閉塞の現状」をはじめとする啄木の自然主義文学批判が、同時代の思想史的・文学史的文脈の中に位置づけられている。また、国木田独歩や岩野泡鳴ら自然主義作家、島村抱月や長谷川天渓ら自然主義の評論家、夏目漱石やその門下生、高山樗牛、与謝野晶子、二葉亭四迷などの文学者はもとより、田中王堂、石橋湛山、徳富蘇峰、伊藤博文や明治社会主義者等、思想家や政治家などと啄木がどう切り結んでいったのかが検証され、啄木を交点とした明治文学史・思想史研究となっている。さらに、啄木の代表作であり、近代歌集の中でも大きな位置を占める『一握の砂』や詩編『呼子と口笛』等の詩歌についての考察を通じて、啄木における評論と詩歌の関係性が明らかにされ、新たな啄木像が提示されている。なお、「時代閉塞の現状」の詳細な注釈が付されている。
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