本書は、『河海抄』が成り立たせた『源氏物語』とそのゆくえについての考察である。
『源氏物語』について、近代的な読みの制度(わたしたちにとっての『源氏物語』)をいったん括弧に入れ、『河海抄』がどのような知のうちに『源氏物語』を成り立たせていたかを明らかにする。
『河海抄』は、さまざまな史実や文献を挙げているだけのようにも見えるが、その例の列挙によって、『源氏物語』にいわば息を吹きこむ。それを、「注釈史」、「享受史」と言うのは正しくないであろう。『河海抄』の『源氏物語』と言うべきであり、それを見届けることから、それぞれの時代にそれぞれの意味をもってあった『源氏物語』(更新されてゆく『源氏物語』)として見ることに導かれる。そこから、それとは異なるものとしてある近代以降の、わたしたちにとっての『源氏物語』を問うことにもなる。
本書は、『河海抄』の知のありようを当時の文脈にそくして照らし出すことによって、テキストの受容、流布、また、歴史意識等をめぐる従来の通念を再検討しつつ、『河海抄』の『源氏物語』をあらわしだすことを試みたものである。
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