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時間の常識を根底から覆す! 時間はいつでもどこでも同じように経過するわけではなく、過去から未来へと流れるわけでもない──。“ホーキングの再来”と評される天才物理学者が、「この世界に根源的な時間は存在しない」という大胆な考察を展開しながら、時間の本質を明らかにする。本国イタリアで18万部発行、35か国で刊行予定の世界的ベストセラー! もっとも大きな謎、それはおそらく時間 第一部 時間の崩壊 第一章 所変われば時間も変わる 第二章 時間には方向がない 第三章 「現在」の終わり 第四章 時間と事物は切り離せない 第五章 時間の最小単位 第二部 時間のない世界 第六章 この世界は、物ではなく出来事でできている 第七章 語法がうまく合っていない 第八章 関係としての力学 第三部 時間の源へ 第九章 時とは無知なり 第一〇章 視点 第一一章 特殊性から生じるもの 第一二章 マドレーヌの香り 第一三章 時の起源 眠りの姉 日本語版解説 訳者あとがき 原注
レビュー(121件)
科学書というよりは哲学書に近いイメージです。内容は面白いのですが、翻訳の仕方がほぼ直訳で、欧米の注釈やたとえの多い文章をほぼそのまま訳していあるので、まどろっこしいです。なぜこういう本を理系の科学者と言われる方が翻訳するのでしょうか。文系の方が内容を理解されたうえで訳された方が伝わりやすい文章になるとは思うのですが。
相対論と量子論の融合
『時間は存在しない』というのは衝撃的なタイトルだ。本書はトンデモ本ではなく、相対性理論と量子力学の融合を試みる「ループ量子重力理論」の提唱者の一人で、イタリアの理論物理学者のカルロ・ロヴェッリさんが、一般読者向けにわかりやすく書き下ろした「時間」の概念を説いた啓蒙書である。 高速で運動すると時間が遅れるという特殊相対性理論、強い重力場では時間が遅れるという一般相対性理論、そして、量子論において時間の最小単位となるプランク時間――これまでの物理学で見えてきた「時間」という存在を振り返りつつ、時間の流れが過去から未来へ一方通行であるのはエントロピーが増大するためだと強調する。 ロヴェッリさんは、ループ量子重力理論を考える中で、エントロピーが増大して見えるのは、私たち自身と私たちが構築してきた物理学が、たまたまそういう宇宙の“一部”を見ているからだと主張する――これは新しい知見だ。 過去の痕跡があるのに未来の痕跡が存在しないのは、過去はエントロピーが低かったために起きる。エネルギーが熱へ変換するときに痕跡を残すのだという。 こうした外的な痕跡を、わたしたちの脳が処理するときに「時間」として感じる。記憶と予測の過程が組み合わさったとき、わたしたちは時間を時間と感じ、自分を自分だと感じるという。そして、時間は、わたしたちの苦しみの元となり、死の恐怖を生み出す。 アニメ『トップをねらえ!』最終回で、「もう同じ時は過ごせないのよ!」と叫ぶシーンがある。 大人になり親から独立すると、もう親とは同じ時間を過ごせなくなる。ネットワークを介して離れたところの時計は同じ時間を刻み、歴史的な痕跡も映像で共有できるというのに、時間は共有できなくなる。そして、自分の子供もいずれ‥‥。 難解で冗長な部分もあるが、巻末の「日本語版解説」を読んで振り返ることで、ロヴェッリさんが言わんとしていることが整理されると思う。 『時間は存在しない』というタイトルは、「この世界の時間構造がわたしたちの素朴なイメージとは異なるということ」(195ページ)を意味している。