「メタロミクス」とは生体を構成する元素、とくに微量金属元素の機能と役割を体系的に解明する学問領域である。
本書は、琵琶湖と金属をテーマに、元素の動態と集積を切り口として、水域環境と生物多様性に関する最新の研究成果を湖沼研究の現場に近い研究者がオムニバス形式で執筆している。
フィールドワークをベースとし、分析化学、環境科学の最前線の手法や知見を包括した内容となっている。
はじめに/本書の構成
第1章 メタロミクスとは
第1節 メタロミクスと琵琶湖の水理現象(原田 英美子)
第2章 美味しいメタロミクス
第1節 耳石の微量元素組成・安定同位体比を用いたビワマス回遊履歴推定(天野 洋典)
第2節 X線吸収微細構造(XAFS)分光法による琵琶湖産シジミの殻皮に含まれる微量元素の化学形態と局所構造の解明(竹本 邦子)
第3節 滋賀県の伝統食材「姉川クラゲ(イシクラゲ)」(玉井 鉄宗・古本 強・朝見 祐也・坂梨 健太)
第3章 植物の潜在力を知るメタロミクス
第1節 琵琶湖に過剰繁茂する水草の管理と有効利用:水草が濃縮した溶存無機塩類が微細藻と野菜を育てる(伴 修平・刘 鑫・畑 直樹)
第2節 琵琶湖岸の希少植物タチスズシロソウー環境要因が個体数に与える影響ー(吉山 浩平・小野 夏実・宮村 弘・河邊 昭・原田 英美子)
第3節 アオバナの青色色素の構造と産業利用(武田 幸作・原田 英美子)
第4節 伊吹山のヨモギと黒色火薬の生産(飯村 康夫・水野 隆文・原田 英美子)
第4章 生物が作り出す鉱物とメタロミクス
第1節 琵琶湖パールー海水産と淡水産の真珠の比較ー(鈴木 道生・佐野 聡哉・淡路 雅彦)
第2節 水生植物の金属集積ー植物に微生物が作用して鉱物ができる現象ー(奥井 啓介・原田 英美子)
第3節 琵琶湖深層部のマンガン酸化物構造体メタロゲニウム(古田 世子)
第5章 見えないものを見るメタロミクス
第1節 環境科学研究への放射光蛍光X線分析の応用(保倉 明子・原田 英美子)
第2節 琵琶湖と流入河川における溶存態鉄の存在形態(丸尾 雅啓)
第3節 琵琶湖湖底の低酸素化にともなう有害元素の動態変化と生物への影響(板井 啓明)
第4節 琵琶湖湖底における底生動物の炭素・窒素・硫黄安定同位体比(大西 雄二)
第5節 生態系においてセレン循環を駆動する微生物(越智 杏奈・井上 真男・青野 陸・三原 久明)
第6章 古の琵琶湖をたどるメタロミクス
第1節 化石と元素,琵琶湖地域の化石を振り返る(高橋 啓一)
第2節 琵琶湖湖底に横たわる過去43万年間の粘土堆積物層の無機化学組成(豊田 和弘)
第3節 元素から見た琵琶湖周辺の中生代花崗岩とカルデラ火山(多賀 優・貴治 康夫)
第4節 X線CT撮影の文化財利用(佐藤 亜聖・山口 繁生・村田 裕介)
初出文献/研究助成金/著者略歴/索引
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