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コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる!第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伝説のデビュー作、待望の文庫化。
レビュー(2630件)
伊坂作品時系列読書のため、デビュー作を読んだ。島の人々にとって外の街・仙台に棲む悪徳警察官・城山の唾棄すべき行動と、荻島での桃源郷のような出来事が同時進行で進む。仙台在住の著者が描く、地図にも載らない、誰にも知られることのない、仙台の先の牡鹿半島の南にあるという荻島は、ご当地小説の趣が色濃い。その島に住む人々の生活に、案山子も含め、リアリティは無いのに、伊坂ワールドに惹き込まれた。
「オーデュボンの祈り」--- 伊坂幸太郎
伊坂幸太郎のデビュー作。なるほど、ここから伊坂幸太郎の世界が始まったのだなと思える作品です。最後にきて全てが明らかになり、悪人はきれいさっぱり始末される。最近の作品に比べると、勧善懲悪的な要素が特に明瞭な気がします。 ファンタジックなミステリーというか、ミステリックなファンタジーです。頁数の割には、さらっと読み進められるハッピーエンドなストーリーです。
ラストのネタバレあり
伊坂さんの作品はなんと言っても読後感が最高ですね。伏線の回収も見事だし、無駄になるエピソードも全くない。だからどの部分を読んでいても流し読みはダメです(笑)!あとから活きてくる(活かしてくるはず)と思いながら細部まで読むのが好きなのですが、伊坂作品はその期待を裏切りません。この作品は特に、主人公の元彼女がずっと言っていた言葉(願望?)が、最後のシーンで本人の意思や行動とは全く関係無しに実現します。しかもストーリーの中でもとても大切な役割で、それ自体に目が行っちゃうんですが、そう言えば彼女が望んでいたことはこういうことだったな、と気付くと、主人公のセリフの素敵さに感動してしまいます。伊坂作品の中でも、読後感がとても気に入っている作品です。
非現実的な世界
ん~、シュールと云う方がピッタリなのかも? でも、実際にあるのかな? って思って、地図を見てしまったり。(笑) まぁ、未来を知る、喋る「カカシ」が居るわけないですけどね。 長閑な田園風景が広がる島を思い浮かべながら、一気に読めてしまいました。
伊坂作品にはまっています。
しゃべるカカシが出てきます。奇想天外な設定で、最初はびっくりしましたが、読み進むうちに本当にそういう島がありそうな、そんな気がしてきます。読み終わって、心地のいい気持ちになりました。カカシは死ぬところは、いやカカシが死ぬとは言いませんが、なんかせつない気持ちになります。何度も読み返したいと思いました。でもこの気持ちは、他の伊坂作品に共通しますけれど。