本書は、自閉スペクトラム症(ASD)を持つ成人とその傾向を持つグレーゾーンの成人の「対人不安」を理解することを目指す心理臨床学的研究の成果である。先行研究の詳細なレビューを踏まえて、質問紙調査によってASD傾向者の対人不安の全体的特徴を見た上で、面接調査によってASD者・傾向者一人ひとりの語りから対人不安をめぐる体験のエッセンスを描出し、考察する。また、その語りの内容とバウムテストの結果との関連についても検討する。こうした当事者の主観的体験に注目した研究を通して、ASD者・傾向者の対人不安の非定型性が明らかになり、そこからは独特の「自己意識」のあり方が見えてきた。
はじめに
1.当事者の声
2.なぜ対人不安か
3.本書の構成
序 章 自閉スペクトラムの心理臨床学へ向けて
1.はじめに
2.言語・コミュニケーションの障害から対人相互性の障害へ
3.スペクトラム性
4.発症要因の多様性
5.周辺群への注目
6.自閉スペクトラムの現代性
7.本質主義の限界
8.「対人性の障害」という視点
第1章 自閉スペクトラムの対人不安の非定型性
--文献の展望
1.はじめに
2.既存のレビューと本章の問題意識
3.自閉スペクトラム症児・者における対人不安の有病率
4.評定者間一致率の問題
5.対人不安の要因
6.自閉スペクトラム症児・者の対人不安の非定型性
7.心理的支援
8.どんな研究が足りないか
第2章 従来の対人不安との比較
1.はじめに
2.自閉スペクトラム症状との関連から見た対人不安
3.対人恐怖症との関連
4.社交恐怖および社交不安症との関連
5.その他の対人不安との関連
6.自閉スペクトラム特有の対人不安
7.ではいかに探求するかーー方法の検討
第3章 グレーゾーン大学生の対人不安1
--質問紙調査
1.問題と目的
2.調査の方法
3.データの分析
4.考察
第4章 グレーゾーン大学生の対人不安2
--語りの分析
1.問題と目的
2.調査と分析の方法
3.結果
4.考察
第5章 成人自閉スペクトラム症者の対人不安
--語りの分析
1.問題と目的
2.調査と分析の方法
3.結果
4.考察
第6章 事例に見る自閉スペクトラムの対人不安
--語りとバウムテスト
1.対人不安の大分類
2.対人不安の大分類とバウムテストの関連
3.調査事例の検討
4.まとめ
終 章 自閉スペクトラムの対人不安の心理臨床学
1. 前章までのまとめ
2. 心理療法における対人不安の現れ方
3. 括弧つきの「自己意識」
4.自己感/他者感から見た自閉スペクトラムの対人不安の心理学的意味
5.本書の意義と課題
註
引用文献
索引
初出一覧
あとがき
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