象徴としてだけでなく、何を成し遂げたかを考察
ヒュパティアは4世紀後半〜5世紀初頭、ローマ帝国のアレクサンドリアで、優れた数学者・哲学者として弟子から政界と宗教界に要人を輩出しつつも、キリスト教徒の政治的対立に巻き込まれて415年に非業の死を遂げた。本書はその生涯に加えて、死後まもなくから21世紀にいたるまでの伝説と受容の長い歴史を紹介するとともに、ともすればそれらに埋もれがちな、彼女が実際に成し遂げたこと、その時代において達成したことは何なのかを考察する。
当時の知識階層における男女それぞれの教育の異なる傾向とその社会的な事情は、女性哲学者たちを生み出す土壌となった。高名な数学者テオンの娘に生まれて学塾を率い、「公的知識人」の役割を担った新プラトン主義者ヒュパティアの活動を、著者は、教義論争と党派間対立に揺れる当時のアレクサンドリアの知的風土と、古代末期ローマ帝国のエリート層の生態のうちに位置づけて、簡明に論じる。
時代の制約のなかに生きる女性知識人をあたたかいまなざしで見つつ、ヒュパティアを過剰に聖女や悲劇のヒロインとして美化することがない視点で描かれた評伝。
大斎の殺人
第1章 アレクサンドリア
第2章 幼年時代と教育
第3章 ヒュパティアの学校
第4章 中年期
第5章 哲学の母とその子どもたち
第6章 公共的知識人
第7章 ヒュパティアの姉妹たち
第8章 路上の殺人
第9章 ヒュパティアの記憶
第10章 近代の象徴
エピローグ 伝説を再考する
謝辞/訳者あとがき/図版一覧/参考文献/原註/索引
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