それは天使の声なのか、悪魔の声なのか。去勢により、ボーイソプラノの美声を永遠に保ちつづけた男たちーカストラート。16世紀末に登場した、この蠱惑的な両性具有者たちは、イタリアを中心とした17、18世紀のヨーロッパで一世を風靡した。性差を超えて神の領域にまで至った彼らの歌声を聴き、人びとは我を忘れて恍惚となり、ヘンデル、モーツァルトをはじめとした多くの大作曲家たちは無限の霊感をうけた。壮麗無類なまでの栄誉と人気をかちえながらも、今世紀初頭に存在が完全に消滅したカストラートたちの謎の正体とは一体なんだったのか。彼らの栄光と悲惨が、その歴史と生活、そして30名にのぼる列伝を通して、今ここに解明される。
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