東京西部の川辺で男性の遺体が発見された。心臓を刃物で刺され右胸を抉られるという不審な事件で、警察は男が愛知の硯職人であることを突き止めるが、捜査は難航。犯人逮捕に至らないまま新たに殺人事件が起こる。さらなる被害者は、旧日本軍憲兵の前歴を持つ人物と、東南アジアから極秘の目的で来日した外国高官だった。思いもよらず陰謀の渦中に巻き込まれ殺人の容疑をかけられた青年・崎津は、独自に真相を追い始めるが……。社会派ミステリの巨匠による傑作推理長編。
第一章 夜の銀座で
第二章 臨華荘の主
第三章 硯の村
第四章 兄と妹
第五章 浮浪者の死
第六章 暗 殺
第七章 罠
第八章 誘 拐
第九章 ある因縁
第十章 考える葉
第十一章 対 決
解説 南陀楼綾繁
レビュー(2件)
昭和三十五年から雑誌に連載された、旧日本軍憲兵などが登場する物語。戦争中は憲兵として高い地位にあった人物が戦後に貧困状態となる一方、戦争中に軍の高額な物資をくすねていた元・軍の下級職員が戦後にその物資を売りさばいて富裕層となった・・・などという冗談のような(?!)話が、きっと実際にもあったのでしょうね。第二次世界大戦では多くの日本人が命を失ったわけですが、無事に生き残った人々の中にも、戦争により人生を破壊されたケースが少なからずあったはずと考えます。読みごたえがありました。