オッカムの主著『大論理学』の全訳を世界に先駆けて完成した著者が、オッカムの神学的・哲学的な意図がどこにあり、オッカム哲学の基本構造とは何かを明解に考察する。オッカムは、若い人が本格的な神学研究をするには、解けない難問や誤謬に陥ったり、真なる論証を詭弁だと思い込むことがないよう、まず論理学の学習が必要であると考え、神学や哲学を例にして論理規則を示した。また彼は『大論理学』によって論理学一般を語るのではなく、スコトゥスの共通本性と個体化の理論、そして同時代の学者たちが主張した、量は実体や性質から独立し、実在的に別のものであるという量独立説に対する批判、さらに述語づけの表示態と遂行態についての議論と、存在エッセと本質エッセンチアに関する議論などを繰り返し展開している。ばらばらのテーマに見えるこれらの議論は、実は“心の内の言葉と、心の外のものとの区別”というオッカムの一貫した視点からなされていることを鮮やかに解明することにより、オッカム哲学の真の意義と哲学史上の位置が自ずと明らかになる、画期的な業績である。
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