漱石から森見登美彦まで、短篇の構築性を解き明かす論集。
視点人物の錯誤や死角・物語が孕む矛盾・構成上の断絶・変則的な因果の構図や定型からの逸脱・反復の中の変化に着目、原拠や周辺の諸言説との比較検討を通し、漱石・鷗外・芥川から三島などの戦後作家、さらに直近の現代作家の短篇に即して、その緻密な構築性を解明する。
はじめに
1 錯誤と死角
第一章 光源としての錯誤 - 夏目漱石『夢十夜』-
一 錯誤の推移
二 悟りと短刀 -「第二夜」-
三 明治の運慶 -「第六夜」-
四 過渡期の人間像
第二章 船上と白洲 - 森鷗外「高瀬舟」-
第三章 誤算の闇 - 菊池寛「藤十郎の恋」-
2 〈型〉からの逸脱
第四章 芥川龍之介童話の因果 -「蜘蛛の糸」から「魔術」へー
第五章 小川未明「赤い蠟燭と人魚」とその周辺
はじめに
一 〈童心〉の逆説性と童話という手法 -「幾年も経つた後」-
二 「赤い蠟燭と人魚」を読む
三 作品論の可能性
1 繰り返しの悲劇 -「砂漠の町とサフラン酒」「蝶と三つの石」-
2 移動・交換から生じる価値 -「千代紙の春」「椎の実」-
3 いつ、何によって気づくか -「小さい針の音」「黒い人と赤い橇」-
4 〈見える〉ことをめぐって - 「二度と通らない旅人」「月夜と眼鏡」「港に着いた黒んぼ」-
5 眠りと時間の流れ方 -「眠い町」「百姓の夢」「ある夜の星だちの話」-
6 加害者の不在 -「負傷した線路と月」「魚と人」-
おわりに
3 反復と変質
第六章 異形の兄姉・饒舌な弟妹
一 レンズ越しの恋 - 江戸川乱歩「押絵と旅する男」-
二 語りの罠 - 岩井志麻子「ぼっけえ、きょうてえ」-
第七章 戦後短篇管見
一 連鎖する変形 - 安部公房「手」-
二 模倣の罠 - 石川淳「灰色のマント」-
三 繰り返しへの予感 - 吉行淳之介「童謡」-
第八章 三島由紀夫自選短編集『真夏の死』の諸相
はじめに
一 反転する因果 -「サーカス」-
二 背負われる戦後 -「翼」「離宮の松」-
三 〈三人目〉という物語 -「クロスワード・パズル」「花火」-
四 問えない理由 -「雨のなかの噴水」-
おわりに
4 連作のメタフィクション
第九章 森見登美彦『新釈 走れメロス 他四篇』論
はじめに
一 天狗になる男 -「山月記」-
二 虹と映画 -「藪の中」-
三 パンツ・ブリーフ・バスタオル -「走れメロス」-
四 消失する男女 -「桜の森の満開の下」-
五 見えない作り手 -「百物語」-
おわりに
初出一覧
あとがき
索 引
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