十代の若者に対し、輝かしい夢を持って社会に出て行く自信を持つことの重要さを問いかけ、具体的にその夢を叶えるにはどうすればいいのか、熱く訴えかける自己啓発小説、第三弾である。
前半は、第一章、第二章と変わらず、生徒たちに豊富な知識を通じて勉強への興味をかき立て、保護者の信頼も勝ち得ていく姿を、軽快に溌剌と描いていく。
夏休み前には、十代までの特権である夏休みという長い自由時間を、一日たりと無駄にせず、自分を高めるために使うよう言い聞かせるために、自分のサハラ砂漠への挑戦譚をきっかけに、幼い時分の初恋話を語るなどして、各自の成長を促すのだった。
しかし、その夏休みの間に、クラス一体格もよく、柔道部で圧倒的な強さを誇っていた八木が、釣りの帰りに事故死するという衝撃的な出来事が起きる。斎場でその火葬に立ち会いながら、小山は自分の不注意で祖母を風呂場で溺れさせてしまったという。
自責に苦しんだ、辛い過去を思い出す。
さらにその後、登校拒否を続けていた阿部健太の家庭内暴力の話が、学級委員の田辺の口を通じて、小山の耳に入ってくる。その解決策を見いだせないまま年末を迎えるが、クラスの女子たちが小山の家を訪れて楽しく過ごしていた最中に、阿部の自殺未遂の一報が入ってくる。
校長や生活指導の井内教諭と連れだって病室に向かい、手首を薄く切っただけという状況に安堵するが、このままではいけないと、小山は荒療治にもみえる賭に出て、いったんは説得できたと思えた矢先、三学期を迎える前日になって、阿部は自分の部屋で自死を選んでしまうのだった。
立て続けに二人の生徒を亡くしてしまうという展開に、小山はやり場のない絶望に追い込まれる。次回の第四章は、その精神的苦悩と、それをいかにして乗り越えていくかという成長の記録が描かれることになる。
普通の単行本サイズなら七冊になるところを、一冊一冊の厚みを増やし、全五冊として上梓されるとなれば、その圧倒的な長さに敬遠する向きも多いだろうが、いったん読み始めてみれば、これまで読んだこともないストーリーに引き込まれ、ページをめくるのがもどかしく感じられるに違いない。
題字には、弘兼憲史氏の「相談役 島耕作」のタイトル、「宮島藤い屋もみじ饅頭」の看板、森進一のCDジャケット、千宗室氏の茶室に飾られる掛け軸などなど、数多くの作品を手がけられた岩見屋錦舟氏に依頼し、鮮やかな行書体で、本のカバーと扉の第一ページ目を飾ることになった。
解説と推薦には、九州大学文学部フランス文学科を卒業し、その後同大学修士課程修了、同大学博 士課程の時にフランスのルーアン大学文学部博士課程に2年間留学し、DEA(専門研究課 程修了書)を終了した後、日本で教員として働きながらフランス、レンヌ大学文学部で、国家博士を取得後、九州大学文学部フランス文学科助手、大分県立芸術文化短期大学国際文化学科、講師、准教授を経て、現在は長崎大学言語教育センター教授として、フランス語、フランス文化、フランス文学等を指導している、大橋絵里教授が担当している。
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