写本の文化誌
: クラウディア・ブリンカー・フォン・デア・ハイデ/一條 麻美子
写本の製作と受容から見る中世世界
巻物から冊子体のいわゆる写本へ主流が移ったヨーロッパ中世の始まり、それはデジタル時代・活字印刷の誕生と並ぶメディアの革新、つまり口述から書記への転換の始まりでもあった。本書は、物としての写本の材料と作られ方、製作にかかわった注文主・詩人や知識人・修道士や職業書記らの実態から、手にした人が本をどう読んだか、本と書かれたテキストの双方がもった政治的役割まで、当時の社会における本と、本をめぐる文化・社会的状況を、さまざまな角度から解説する。
なかでも、一種の文芸マネージメントから生まれた傑作・マネッセ写本についての、成立背景を含めた製作過程や、その後の数奇な運命とドイツ史とのかかわりの情報は、これまで詳しく紹介されたことがなく、またミステリのようにおもしろい。
「人の心臓より尊い」と言われた羊皮紙の世界、書記が一日に書ける分量と与えられた物質的・精神的報酬、仕事に対する書記のプライドや不満が書き込まれた挿絵や奥付、写本の窃盗事件あれこれ……。
物としての写本とメディアとしての写本をめぐる一冊。
レビュー(7件)
本は贅沢品
一冊の写本ができるまでに、多くの工程・職人の手がかかっていることが改めて分かった。図版等はすべて白黒であるが、その気になればデジタル化された写本をインターネットで閲覧できる。(訳者がURLをあとがきで紹介して下さっています。)盗難防止に本棚に鎖でつながれている写本たちの並ぶさまは、いかに当時写本が高価な品だったかを物語っている。 「マネッセ写本」について詳しく取り上げているので一冊の写本について理解が深まり楽しかった。翻訳本であるが、翻訳者の文章がとても読みやすく、引き込まれ、毎日時間を見つけて読むことを楽しみに(支えに)家事を頑張れました。紙の本が好きな方にお勧めです。ページをあちこちめくることが紙の本の楽しさのひとつでもあると思います。 この本を読んだ後に、「薔薇の名前」の映画を久しぶりに見たいな~と思いました。