安野光雅が描く、自らの幼少期の思い出と、少年の目でとらえた美しい世界。 漱石が絶賛した日本文学の不朽の名作が、心に残る情景とともによみがえる。 「本だけは子どものころの続きだった。はるかむかしのことになった今でも、 おもいだすのはきのうのことではなく、少年時代のことである。」-安野光雅 古い茶箪笥の抽匣から銀の匙を見つけたことから始まる、伯母の愛情に包まれて過ごした幼少期の日々を綴った自伝的作品。安野光雅によって情感豊かに描きだされた子どもの内面世界は、誰しもの心にある郷愁、幼き日のさまざまな感情を思い起こさせる。
レビュー(6件)
余命短い父に贈った書
地方に離れて暮らしている余命短い病床の父に贈りました。人は死を受け入れると人生を振り返りながら自分の気持ちを整理し始めるので、死ぬ前に是非読んでおきたい本として検索して探しました。私も知らない昔の本でしたが、名作と呼ばれる有名な作品でした。子供の頃の主人公の意地とプライドの交錯の様子が美しい言葉で表現されており、恩師、幼馴染、最愛の育ての伯母との別れ、素直になれない主人公がいつも涙を流すという心打つ自伝の書です。高齢の父には文庫本は読みづらいので、文字が大きな単行本で贈りました。私は文庫本を購入して一緒に読んでみました。若い人よりも人生の経験豊かな年配者に心響く作品だと思います。